ジョブクラフティングとは?厚労省でも紹介された社員のモチベーションを高める人事教育の手法を解説!

目次

経営者や管理職の方の中には以下のように考える方も多いのではないでしょうか?

「従業員にもっと主体的に動いて欲しい」
「人材が定着しないため、いつも人手不足に陥ってしまう」

このような課題を解決する1つの手段が「ジョブクラフティング」です。ジョブクラフティングは、従業員の「やらされ感」を解消し、従業員にとっての仕事のやりがいを見出すための人事教育の手法として近年注目されています。

令和元年に厚労省が企業の人手不足解消のために公表した「労働経済の分析」でも紹介されている手法です。本記事では、ジョブクラフティングの概要や実践方法、注意点を解説します。

ジョブクラフティングとは?

まずは、ジョブクラフティングの意味について解説します。近年注目を集めている背景やジョブデザインとの違いも押さえておきましょう。

ジョブクラフティングの意味

ジョブクラフティングでは、従業員の意識改革が行われます。組織で働いている従業員一人ひとりが自分の仕事に対する認知や行動を変えることで、「やらされている仕事」から「やりがいのある仕事」へと変わります

ジョブクラフティングは人事教育の手法の1つで、米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授によって2001年に提唱されました。

日本では、令和元年に公表された厚労省の「労働経済の分析」でも紹介され、ジョブクラフティングが取り入れられています。

ジョブクラフティングによって、自ら考え、能動的に行動できる「自律型人材」が育成できます。上司からの指示待ちではなく、自分自身の意思で仕事を再定義するため、個々のモチベーションが高まり、パフォーマンスの向上が期待できます。

近年注目される背景

近年ジョブクラフティングが注目される背景には「事業を取り巻くスピード感の変化」と「多様な働き方の出現」があります。

まず、事業を取り巻く環境が変化し、より複雑でスピード感のある仕事が求められるようになりました。このような状況下では、目の前の仕事に追われて考えることをやめてしまい、仕事の意味や意義が感じにくくなってしまいます。

また、長期雇用や年功賃金が当たり前だった世の中から、複業やキャリアアップのために転職を繰り返すことなども広く認められるようになったため人材確保がより難しくなっています。

このような背景から、従業員は仕事をこなすだけでなく、自身のキャリアアップを見据えた仕事との関わり方が必要になり、企業としても従業員のキャリア開発と仕事を紐づけることで従業員のモチベーションが高まり、人材の定着化につながるためジョブクラフティングが注目されています

ジョブデザインとの違い

ジョブクラフティングと似た言葉に、ジョブデザインがあります。どちらも従業員にやりがいを持って仕事をしてもらうための手法ですが主体が異なります。

ジョブデザインは、経営者が従業員に対して働きがいのある仕事を設計します。一方で、ジョブクラフティングはあくまでも従業員の主体的な行動を促す手法で主体は従業員自身です

目的は同じでも、ジョブクラフティングとジョブデザインではアプローチの仕方が異なります。

ジョブクラフティングのメリット

ジョブクラフティングはどのような目的で行われるのでしょうか。企業がジョブクラフティングを導入するメリットについて3つ紹介します。

個人のモチベーション向上

ジョブクラフティングによって、従業員の仕事に対してのモチベーションが向上します。仕事の意義や必要性を理解することで、「やらされ感」が解消されてやりがいを持って働けるようになります。

従業員のモチベーションが向上することによって「現場の業務効率化」「イノベーションの促進」「自己学習の習慣化」が期待できます。経営層の見えていなかった現場の無駄な部分が改善され、新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。また、目標達成のために自ら学ぶ習慣がつけば持続的な組織の成長も見込めます。

このように従業員一人ひとりのモチベーションの向上は組織の成長や事業の成長に大きく貢献します。

組織内の人間関係の改善

ジョブクラフティングは個人に対してだけでなく、組織にも大きな影響を与えます。ジョブクラフティングによって、やりがいをもって働く従業員はコミュニケーションが活発になり、同じ目的をもって業務に取り組むため人間関係の改善が期待できます。

社内の人間関係が改善されることで、目的達成のための共創や助け合いが生まれ、成果をあげやすい組織体質が実現できます

人材の定着

ジョブクラフティングは、人材の定着にも貢献します。従業員がやりがいをもって働くことで、自社の商品や組織に愛着を持ち、人材が定着し離職率の低下につながるでしょう

また、従業員満足度が高い組織では、対外的な企業の魅力も高まるため、採用活動でも有利になります。ジョブクラフティングを通じて、仕事を単なる給与を得るための手段としてではなく、自身の成長ややりがいのための手段として捉えてもらうことができます。

優秀な人材に自社に残ってもらうためには、ジョブクラフティングが有効です。

ジョブクラフティングの3つの視点

ジョブクラフティングの具体的な手法について説明する前に、厚労省の「労働経済の分析」でも紹介されたジョブクラフティングの3つの視点を理解することでより理解が深まります。ジョブクラフティングを実践する際は、以下の3つの視点をもって取り組みましょう。

作業クラフティング

1つ目の視点は、作業クラフティングです。作業クラフティングとは、仕事のやり方に対する工夫です。仕事の量や範囲を変化させることで、仕事の中身を充実させます。例えば、目標を再設定して必要な業務を洗い出したり、優先順位に沿ったスケジュール管理をしたりなどが挙げられます。

自身の業務内容を主体的に構築していく姿勢が必要です。

人間関係クラフティング

2つ目の視点は、人間関係クラフティングです。人間関係クラフティングとは、周囲の人への働きかけの工夫です。周囲の人と積極的に関わり、人間関係を見直すことで、サポートや前向きなフィードバックをもらい、仕事への満足度を高めることができます。例えば、上司からのアドバイスを求めたりなどが挙げられます。

自身の業務内容だけでなく、他の人とどのように関わっていくかもジョブクラフティングに重要な視点です。

認知クラフティング

3つ目の視点は、認知クラフティングです。認知クラフティングとは、仕事の捉え方や考え方に関する工夫です。仕事の目的を達成することで、どのように社会に貢献できるかや自身の将来にどのような影響を与えるかなどを考えます。仕事内容は同じであっても目的を理解して取り組んでいるかで成果に大きく影響します。

以上の3つの視点をもって取り組むことで、スムーズにジョブクラフティングを実践に移せます。

ジョブクラフティングの4つのステップ

ジョブクラフティングには全部で4つのステップがあります。順序通り、丁寧に実践していきましょう。

①業務内容の洗い出し
②自己分析
③仕事の捉え方の見直し
④アイデアの実践

①業務内容の洗い出し

ジョブクラフティングで最初に行うのは業務内容の洗い出しです。作業クラフティングに該当します。自分の業務内容を再構築するためには、細かい業務も含めて現状の仕事内容を書き出すことから始めます

洗い出しの際には、かかっている工数や業務の種類によって分類ができていると以降のステップをよりスムーズに進められます。

②自己分析

次に、自己分析をおこないます。自分の強みやスキルを現在の仕事に活かせるかどうかに限らず、すべて書き出すことが重要です

例えば、TOEICや簿記などの目に見えるものだけでなく、人当たりがよかったり、気遣いができるなど目に見えにくいものもあります。特に目に見えない部分は自分でも気づきにくいので、上司や部下など他の人の客観的な視点も取り入れながら自己分析をするのがおすすめです。

③仕事の捉え方の見直し

業務内容と自己分析について一通り洗い出せたら、仕事の捉え方の見直しに移ります。「なぜこの業務は会社にとって必要なのか」「自分はこの仕事で何を実現したいか」などの主体的な動機を考えます

主体的な動機と自分の強みを組み合わせることで、具体的な業務改善を検討します。例えば、スケジュール管理のツールを導入したり、人材育成制度の改訂などが挙げられます。

最初はうまくいかなくても、自分なりのアイデアを出してみることが重要です。

④アイデアの実践

最後に、自分で考えたアイデアを実践に移します。アイデアの実践の際に重要なのは、まわりのサポートです。上司や同僚などにアドバイスをもらい、軌道修正をしながらアイデアを実践していきます。

一つの成功体験を得ることで、従業員の自信となり、さらなるモチベーションアップにつながります。失敗を許容し助け合いのできる組織であることで従業員が安心して挑戦でき、ジョブクラフティングが実現します。

ジョブクラフティングの注意点

最後にジョブクラフティングが失敗しないための注意点について、2つ紹介します。

仕事の属人化

ジョブクラフティングで気をつけるべきことの1つ目は仕事が属人化することです。ジョブクラフティングでは、個人の自主性を促すため「その人にしかわからない仕事」が発生してしまう危険性があります。仕事が属人化すると引き継ぎができなかったり、正しい管理がされなかったりと組織に悪い影響を与えます。

属人化しないためには、従業員に丸投げにせずにうまくサポートする体制づくりが重要です。定期的に報告する場を設けるなど、情報の共有を心がけましょう。

上司からの押し付け

ジョブクラフティングで気をつけるべきことの2つ目は上司の押し付けになることです。

ジョブクラフティングで重要なのは、従業員が自分で考えて自主的に行動することです。アイデアを否定したり、業務改善を押し付ける形ではジョブクラフティングは実現しません。

一方で、全くアイデアが出てこなかったり、全く見当違いのアイデアが出てきてしまうこともあるでしょう。そこで重要になるのが「対話」です。真っ向から否定するのではなく、自主性を尊重したコミュニケーションが必要になります。上司は部下の挑戦を温かく見守り、長期的な視点を持つように心がけましょう。

人的資本経営・組織開発ならRECOMO

本記事では、ジョブクラフティングの概要や実践方法、注意点までをご紹介しました。

ジョブクラフティングでは、従業員の「やらされ感」が解消され、やりがいをもって自主的に行動するようになるため、組織の人間関係の改善や人材の定着など企業にとってのメリットも大きいです。

一方で、3つの視点や4つのステップにしたがって丁寧に行わないと仕事が属人化したり、上司からの押し付けになってしまう危険性もあるので注意が必要です。

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