ティール組織とは?超自律型の次世代型組織をわかりやすく解説!

目次

ティール組織について、組織開発に関心のある方であれば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ティール組織は、従業員それぞれが、目的達成のための意思決定を行う組織です。特に、人的資本経営が求められている現在、部下を抱える管理職であれば、ティール組織は理想の組織とも思えるでしょう。

一方で、誤った認識でティール組織を目指そうとすると組織崩壊が起きてしまうリスクを理解しておくべきです。

本記事では、ティール組織とは具体的にどんな組織なのかという部分から説明し、ティール組織に至るまでの組織フェーズやデメリットまでをご紹介します。

ティール組織とは?

概要

ティール組織とは、従業員が企業の目的(パーパス)を正しく理解し、それぞれが目的達成のための意思決定を行う組織です。従業員は上司の指示を待たずとも、自らで考え行動します。ティール組織は「進化型の組織」とも訳され、従業員個人としても組織としても自主的に成長し続ける組織です。

ティール組織において特徴的なのは、組織内の関係性が対等(フラット)であるという点です。不必要な上下関係や慣例がないため、組織内の風通しがよく、従業員もやりがいを持って業務に取り組めます。

メリットばかり並べましたが、簡単にティール組織を実現できる訳ではありません。ティール組織は組織フェーズの最終形態とされており、それまでに5つの組織フェーズをたどります。ティール(Teal)とは青緑色の意味で、ティール組織の概念ではそれぞれの組織フェーズを色で例えています。

一般的には、ティール組織が最も良い組織と位置づけられているため、ティール組織そのものに意識がいきやすいですが、重要なのはティール組織に至るまでの組織フェーズを正しく理解することです。ティール組織の概念を理解し、自社が現在どのフェーズにいるのか、また自社では組織フェーズを上げる必要があるのかなどを客観視することが重要です。

背景

ティール組織の概念は、2014年にマッキンゼー・アンド・カンパニー出身のフレデリック・ラルーによって提唱されました。ラルーの著書である「Reinventing Organizations」では、ラルー自身が世界中の組織を約2年間調査し、組織フェーズについてまとめています。本書は世界12カ国で翻訳されており、日本でも2018年に『ティール組織』というタイトルで出版されています。

そのため、日本では2018年あたりから、全く新しい組織モデルとしてティール組織が注目され、多くの企業で考え方が取り入れられています。

DAOとの違い

従業員が自律した組織というとDAOと混同する方もいるのではないでしょうか。DAOとは、自律分散型組織(Decentralized Autonomous Organization)の略称です。

結論から言うと、ティール組織はDAOの1つであると言えます。DAOは、従業員自らが意思決定し、自律的な活動で運営される組織の総称のことです。DAOとは対照的に管理者の指示によって動く組織を「管理型組織」と呼びます。

ティール組織はDAOの代表的な例ですが、他にも「アジャイル組織」や「ホラクラシー組織」があります。アジャイル組織は、小規模のチームに意思決定権を与え、開発とテストを繰り返す組織形態です。ホラクラシー組織とは、経営者や役員などの役職を持たない組織のことを指します。

DAOも組織開発において重要な概念ですので、一緒に覚えておきましょう。

ティール組織に至るまでの組織フェーズ

ティール組織の概念は、組織フェーズを色で例えています。組織フェーズは7段階あるとされており、グレー→マゼンタ→レッド→アンバー→オレンジ→グリーン→ティールの順番です。ただし、一般的には最初のグレーとマゼンタを省略した5段階で語られることが多いです。本記事でもレッド以降の組織フェーズについて解説します。

衝動型の組織(レッド)

衝動型の組織とは、一言で表すと「絶対的な権力者によって支配されている組織」です。権力者にとっては、自分のやりたいように部下を従わせることができ、組織のメンバーは言われたことをこなすだけで済みます。

しかし、このような組織形態では短期的には効果を発揮しても、持続的に成果を出すことは難しいでしょう。組織のメンバーは考えることを辞め、少しずつ不満も蓄積していきます。

特に創業期にはこのような状態に陥りやすく、徐々に役職や役割を割り振るなどして、次の組織フェーズを目指すべきでしょう。

順応型の組織(アンバー)

次の組織フェーズは順応型の組織です。順応型の組織は一言で表すと「トップダウン型の組織」です。衝動型の組織とは異なり、役割分担や規則が存在します。絶対的な権力者からの支配は脱却するものの、階層的構造(ヒエラルキー)が存在し明確に上下関係が決まっています。上司が決めた決定事項を部下はこなし、良いアイデアがあっても、部下からは提案が出にくい組織です。

上下関係がしっかりしていることは社内の秩序を守る点では、有利に働くことも多いです。しかし、これまでは順応型で通用していたとしても、これからの変化の激しい時代に対応するのは難しいのではないでしょうか。従業員との対話を行うことや、評価制度を作るなどして、次の組織フェーズを目指すべきでしょう。

達成型の組織(オレンジ)

次の組織フェーズは達成型の組織です。達成型の組織は一言で表すと「効率重視の組織」です。順応型の組織とは異なり、従業員の評価制度も整備され、成果を出した従業員に対しては、昇給や昇進が行われます。一方で、順応型と同様に階層的構造(ヒエラルキー)は存在します。

達成型の組織では、組織の成果をあげるため、効率化が日々行われ、基本的には数値で管理されます。効率的に成果をあげるという面では合理的な部分もありますが、数値に追われて過重労働になってしまったり、社内での出世競争が激化して関係性が悪くなってしまったり、といった問題が発生する可能性があるセンシティブな組織フェーズでもあります

日本の企業において一番多い組織フェーズだとされており、従業員の多様性を認めることや企業文化の醸成に取り組むことで、次の組織フェーズを目指すか検討しても良いでしょう。

多元型の組織(グリーン)

次の組織フェーズは多元型の組織です。多元型の組織は一言で表すと「風通しの良い組織」です。達成型の組織までは、トップダウン型の組織に当てはまりますが、多元型の組織以降はボトムアップ型の組織になります。従業員が主体性を持って働くようになり、自然に部下の方から提案が出てくるようになります

このような多元型の組織に進化させるためには、人の持つ可能性を信じ、個のパフォーマンスを最大化させるような経営の舵取りが必要になります。組織のリーダーは働きやすい環境づくりに尽力します。

日本の企業においてこの次元の組織を実現している企業はまだ少数派ではないでしょうか。従業員の心理的安全性が担保され、自主的に行動する組織は十分優れた組織と言えますが、さらに上をいく組織フェーズが存在します。

進化型の組織(ティール)

組織フェーズの最終形態とされているのが、進化型の組織(ティール組織)です。多元型の組織との決定的な違いは「階層的構造(ヒエラルキー)が存在しない」ことです。多元型の組織は、上司が部下のことを理解し、上司は部下をサポートしていく立ち位置ですが、進化型の組織では上司部下の概念すら存在しません。

冒頭で説明した通り、組織のメンバー全員が対等(フラット)で目的達成のために共鳴しながら自律して行動します。

このように、ティール組織になるまでの過程では、徐々に階層的構造(ヒエラルキー)がなくなっていき、トップダウンの経営からボトムアップの経営に変わっていく特徴があります

ティール組織の3つのポイント

企業がティール組織を目指す際には、どのようなことを意識して取り組むべきなのでしょうか。ティール組織を構成する3つのポイントについて紹介します。

セルフマネジメント

セルフマネジメントとは、人からの指示を受けて行動するのではなく、自分で判断して行動するやり方です。セルフマネジメントの導入方法は至ってシンプルで「各人に意思決定の権限を与える」ことです。ただし、実際には個々に意思決定の権限を与えることは、誤った意思決定をするリスクが高まるため、導入に懐疑的な場合がほとんどでしょう。

ティール組織では、上下関係がないため指示は発生しないものの、アドバイスは頻繁に行われます。誤った意思決定をするリスクが高いからこそ、いろいろな人の意見を取り入れ、熟考して意思決定に至ります。

このような企業文化を少しずつ構築していき、権限移譲についても様子を見ながら取り組むべきでしょう。

エボリューショナリーパーパス

エボリューショナリーパーパスは「目的を進化させる」と訳します。創業メンバーで一生懸命考えた企業の目標(パーパス)を社内に浸透させることは極めて重要です。しかし「パーパスは進化する」という考え方を持ち合わせていなくてはいけません。

パーパスは創業メンバーや経営層だけのものでなく、組織全体の一人一人のものです。顧客や現場の従業員の声、外部の環境などを踏まえて、チューニングをし続けることでパーパスは強固で永続的なものになります。

このように、パーパスを大切にしながらも、時には見直し、組織を全員で作っていくという企業文化もまたティール組織に重要な要素です。

ホールネス

ホールネスは「全体性」と訳され、従業員の心理的安全性の高い職場環境のことを指します。職場で自分をさらけだせているかという点がホールネスにおいて重要な要素です。強い部分だけを見せるのではなく、弱いところも含めて見せられる関係値を築くことが心理的安全性の確保に繋がります。

前述のセルフマネジメントやエボリューショナリーパーパスもホールネスの環境があってこそ、作り上げていくことが可能です。ホールネスも一朝一夕で改善できる訳ではなく、地道に従業員と「対話」することで徐々に構築されます。対話する場を作るという意味ではワークショップの実施や社内イベントの実施なども効果的でしょう。

ティール組織のデメリット(失敗例)

ここまではティール組織のメリットを中心にご紹介しましたが、ティール組織を目指すことによって、理解しておくべきデメリットも存在します。代表的なものとしては、以下の2つが挙げられます。

・運用の仕方によっては生産性が落ちる
・業務管理/リソース配分が難しくなる

例えば、セルフマネジメントができない従業員が組織にいる場合は生産性が落ちることがあります。自分で考える能力が備わっていない従業員であれば行動に移せず、組織全体の生産性に影響してきます

また、それぞれが視座が低く独立して動いていると、他の人が何をしているのかが分かりづらくなるデメリットがあります。問題が発生した際のトラブルシューティングに遅れてしまったり、組織全体を見渡せる視野を持った人材がいないとリソースが一部に集中してしまったりといった状況も考えられるでしょう。

これらを未然に防ぐには「従業員との対話」と「お互いに進捗を管理できる仕組みづくり」が必要です。従業員のモチベーションが落ちないように、定期的な1on1を実施したり、組織全体で共有できる進捗管理のツールを導入したりといった工夫がティール組織の運用に必要不可欠です。

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