目次
社員が10人を超えたあたりから、なぜか組織が回らなくなる。
社長のカレンダーが埋まり、現場に任せたはずなのに判断が全部戻ってくる。
優秀な人ほど疲弊し、「この会社、成長できないかも」という空気が漂い始める。
もしあなたが今、この状態に心当たりがあるなら——
まずお伝えしたいのは、あなたの頑張り不足でも、マネージャー候補の能力不足でもないということです。
10人の壁の正体は、ほぼ例外なくこれです。
マネージャーを育てようとしていないのではなく、
マネージャーが育つ“仕組み(構造)”を作っていない。
この記事では、組織づくりの現場で100社以上見てきた共通構造をもとに、
10人→30人→50人でも崩れない「マネージャー育成の設計図」を、テンプレ付きで解説します。
まずは診断:あなたの会社は「10人の壁」状態か?
次のうち、3つ以上当てはまる場合、組織はすでに“詰まり”を起こしています。
- 現場で決めてほしいことが、結局社長の判断待ちになる
- リーダーに任せても「最終判断は社長で…」が増える
- 相談・承認・例外対応が爆増して、社長の集中力が枯渇している
- マネージャー候補が「プレイヤー思考」から抜けない
- 採用しても育つ前に辞める/優秀層ほど冷める
- 売上は伸びても利益が残らない(社長の工数が限界)
ここで重要なのは、症状を「人」の問題にしないことです。
この段階で起きているのは、ほぼ100%「構造の病気」です。
10人を超えると増えるのは、仕事量ではない
多くの経営者が誤解します。
「忙しいから、採用しよう」
「管理職研修を入れよう」
「1on1を増やそう」
もちろん、それらが効く場面もあります。
しかし10人の壁で増えるのは、タスクではありません。
増えるのは“例外判断”です。
- 優先順位がぶつかったとき、どちらを取るか
- この顧客だけ特別対応するか否か
- このメンバーの評価は何を基準にするか
- 目標未達の原因は個人か、仕組みか
つまり「正解が一つじゃない判断」が爆増する。
そして——
判断基準が言語化されていない組織では、現場は決められません。
決められないと、判断は自然に“一番強い人”に集まります。
結果、社長に戻る。
社長が忙しいのではなく、
意思決定が社長に集中する構造になっている。
これが10人の壁の本質です。
「マネージャー不在」とは、席が空いていることではない
10人の壁でよく起きるのが「マネージャー不在」です。
しかしこれは、役職者がいないという意味ではありません。
より正確に言うとこうです。
マネージャーという“席”はあるのに、
「責任」「権限」「評価」が空洞になっている。
だから候補者はプレイヤーのままになります。
本人が悪いのではなく、そうならざるを得ない設計になっている。
ここで初めて、育成の議論が本質に入ります。
必要なのは「教育」ではなく「設計」です。
放置すると何が起きるか(短期〜長期)
この状態を放置すると、組織は高確率で次のルートに入ります。

短期(3〜6ヶ月)
- 社長の疲弊 → 判断の質が落ちる
- 優秀な人ほど成長を感じられず離職する
- 採用しても育つ前に辞める(教育投資が回収できない)
中期(1〜2年)
- 売上は伸びても利益が残らない(社長工数が限界)
- 派閥・サイロ化が進み、文化が崩れる
- 「あの頃は良かった」という言葉が増える
長期(3年〜)
- 成長が止まり、停滞が常態化
- 社長は現場に戻れず、でも任せられない状態に
- 最悪の場合、組織が空中分解する
10人の壁は、気合で越える壁ではありません。
構造の設計で越える壁です。
10人の壁を突破する「マネージャー育成の設計図」3ステップ
ここからが本題です。
RECOMOが推奨する「育成」は、研修中心ではありません。
役割・委譲・横連携を設計し、「育つ構造」を作るアプローチです。
ステップ1:マネージャーの役割を「3つの責任」で定義する
多くの組織には「マネージャー」という肩書きはあっても、
「何をする人か」が曖昧です。
だからプレイヤーとの違いが分からず、プレイヤーのままになる。
まず、役割を次の3つで固定してください。
- 成果責任(KPI/アウトカムの達成)
- 育成責任(育成・評価・配置)
- 業務設計責任(仕組み化・改善・標準化)

そして重要なのは、権限をセットで渡すことです。
“任せた風”が一番危険です。曖昧さは必ず社長集中を生みます。
権限委譲の例(小さくてOK)
- 有給申請の承認はマネージャー
- チーム目標の起案はマネージャー
- 採用面談の一次判断にマネージャーが入る
ステップ2:「失敗前提」で委譲を設計する
委譲が進まない会社には、共通の誤解があります。
「ちゃんとできるようになったら任せる」
逆です。
任せるから育ちます。
だから委譲は段階設計が必要です。
委譲5段階(この通りでOK)
- 観察:社長がやるのを隣で見せる
- 共同:50:50で一緒に判断する
- 支援:本人にやらせ、社長は質問に答えるだけ
- 承認:事後報告を受けて承認するだけ
- 完全委譲:報告不要、結果だけ見る

ここで決定的に重要なのが、失敗を設計に組み込むことです。
つまりガードレールを作る。
失敗ガードレール3点セット
- 許容範囲:どこまでの失敗ならOKか
- 監視指標:何を見張るか
- 戻す条件:いつ段階を戻すか
例:
「KPIが80%を下回ったら段階3に戻す」
「クレームが連続したら段階2に戻す」
これがあると、委譲は“賭け”ではなくなります。
社長も安心して任せられ、マネージャーも安心して挑戦できる。
ステップ3:マネージャー同士の学習コミュニティを設計する
10人を超えた組織では、
「社長×マネージャー」の1対1だけに頼ると必ず詰まります。
必要なのは、マネージャー同士が学び合う横のつながりです。
週1「マネージャー定例」テンプレ
やることは3つで十分です。
- 各チーム状況共有(5分×人数)
- 共通課題ディスカッション(15分)
- ベストプラクティス共有(10分)
そして最大のポイントは——
社長は原則参加しない。
社長がいると報告会になります。学びが止まります。
この場は「マネージャーがマネージャーになる場」です。
ここまでできれば、組織は「勝手に強くなる」
この設計が入ると、組織の変化はかなり早いです。
- 経営者が日次の判断から解放される
- マネージャーが意思決定を担い始める
- メンバーが「うちの上司、頼りになる」と感じ始める
- 自律的にPDCAが回り、採用・定着・育成が全部つながる
10人の壁は、「人を増やす壁」ではありません。
社長の個で回す会社から、構造で回す会社へ移行できるかの壁です。
今すぐできるアクション(3分で完了できること)
最後に、今日やる一手を置いておきます。
- マネージャー候補(または現任)を1人決める
- 役割を3つで固定する(成果/育成/業務設計)
- 委譲する判断を“1つだけ”決める(例:有給承認、目標起案など)
- 失敗ガードレールを1行で決める(例:80%割れで戻す)
たったこれだけでも、社長集中は減り始めます。
ここまで読んで「うちも詰まってる」と感じた方へ。
10人の壁は、原因が会社ごとに少しずつ違います。
だから最短は、「いまどこが詰まっているか」を特定することです。
✅ 無料:組織の詰まり診断(5分)
- 社長に戻ってくる判断は何か
- 役割OSの空洞はどこか
- 委譲のどの段階で止まっているか
- まず1週間で変える一手は何か
を整理し、次の打ち手まで落とし込みます。
よくある質問
Q. 研修や1on1を増やすだけではダメですか?
研修や1on1は有効ですが、10人の壁の主因は「判断の集中」です。判断基準・役割・委譲が設計されないと、研修しても社長集中は解消されません。
Q. マネージャー候補がプレイヤー思考から抜けません。
本人の問題というより「責任・権限・評価」が空洞になっているケースがほとんどです。役割定義と権限委譲をセットで設計すると立ち上がります。
Q. 委譲すると品質が落ちそうで怖いです。
怖いのは当然です。だからこそ「失敗ガードレール(許容範囲・監視指標・戻す条件)」を事前に決め、委譲を賭けにしない設計が必要です。
Q. 何から始めるのが最短ですか?
まず「社長に戻ってくる判断」を棚卸しし、委譲する判断を1つ決め、役割3点セット(成果/育成/業務設計)を明文化するのが最短です。
まとめ
10人の壁の正体は「育成不足」ではありません。
判断が社長に集中する構造欠陥です。
突破の鍵は3つ。
- 役割定義(成果/育成/業務設計)
- 失敗前提の委譲(5段階+ガードレール)
- 横連携(週1マネージャー定例)
構造が変われば、人は立ち上がる。
人が立ち上がれば、組織は勝手に回り始めます。