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新しく採用した従業員には早く本来の力を発揮して活躍してもらい、できるだけ長く働いて欲しいですよね。人材の定着や育成において重要な取り組みの1つに「オンボーディング」があります。
入社時のオリエンテーションもオンボーディングの1つですが、オンボーディングの領域は入社前~入社後1年程度まで長期に渡ります。
入社オリエンテーションは行っていても、その他のオンボーディングには取り組めていない企業も多いのではないでしょうか。本記事では、オンボーディングの意味や目的、実際に導入するためのステップや具体例をご紹介します。
オンボーディングとは?
オンボーディングとは、英語の「on-board」が由来となっており、人事用語におけるオンボーディングは、「新しい従業員に会社の環境に慣れてもらい、本来の能力を発揮してもらうための取り組み」を指します。
どんなに優秀な従業員であっても、会社や配属先の組織の環境にマッチしていないと十分な能力は発揮できません。能力が発揮されないだけでなく、早期退職の可能性も高くなります。
オンボーディングのゴールは新しい従業員に戦力として育ってもらうことです。そのために必要な、企業と従業員の相互理解や働きやすい環境整備などがオンボーディングの取り組みとなります。
特に、昨今では労働人口が減少し、採用が難しくなっている背景があるため「オンボーディング」の重要性が高まっています。
入社オリエンテーションとの違い
「オンボーディング=入社オリエンテーション」と思っている方も、いらっしゃいますが、オリエンテーションはオンボーディングの中の1つの取り組みに過ぎません。
オリエンテーションとは、会社概要や就業規則などを伝える場で通常1日で完了する内容です。一方で、オンボーディングは入社前から入社後1年程度まで行われる中長期的な取り組みです。
また、オリエンテーションで会社の説明をするだけではオンボーディングの取り組みとは言えません。「各部署に新人を紹介する」「先輩社員との対話の場を設ける」など、環境に慣れてもらうための工夫を行うことでオリエンテーションもオンボーディングの一環として機能します。
OJTとの違い
OJTとは、”On The Job Training”の略で、新人教育の際に先輩社員が業務を一緒に行いながら指導する方法のことです。OJTもオンボーディングの一環として活用されることの多い取り組みですが、数あるオンボーディングのプロセスの一部に過ぎません。
OJTでは、業務に慣れてもらうことが重要視されますが、オンボーディングでは業務だけでなく、会社や組織に慣れてもらうことも重要視されます。OJTを通して、先輩社員と新人社員の接点が増える面もあるので、OJTはオンボーディングとして非常に有効な取り組みです。
オンボーディングの目的
オンボーディングが重要視されている理由は大きくわけて以下の2点です。
・従業員の早期活躍を促すことができる
・早期離職を防止できる
以下では、それぞれの理由について解説します。
即戦力を育てられる
中途で優秀な人材を採用したとしても、新しい環境ですぐに能力を発揮することは難しいです。前職と同じ業種や職種だとしても、企業文化や社内のルール、使えるリソースなど会社によって状況は様々なため、環境に慣れるための準備期間が必要です。
オンボーディングを効果的に実施できると新しく採用した従業員が環境に慣れて能力を発揮するまでの時間を短縮できます。指導する側の工数も削減されて、総合的な観点から生産性を高めることができます。
早期離職を防止できる
オンボーディングが機能している企業では、人材が定着し、採用や育成にかかるコストも最小限に抑えられます。逆にオンボーディングが機能していない企業では、早期離職者が多く発生し、再度採用や育成をする手間やコストが発生する悪循環が生まれます。
早期退職の原因は、仕事内容や人間関係のミスマッチがほとんどです。これらの問題にはオンボーディングの取り組みが有効です。オンボーディングでは、新人が組織に溶け込めるような環境づくりが行われ、新入社員と企業の相互理解も進むので人材の適材配置も可能になります。
このような点から、人材の定着や育成に課題を抱える企業にとっては十分にメリットのある取り組みです。
オンボーディングの具体例
では実際に、オンボーディングではどのようなことが行われるのでしょうか。
実施されるオンボーディングは企業によって様々ですが、「入社前に行うもの」「入社後に行うもの」「継続的に行うもの」の3つがあります。
以下では、それぞれの具体例について紹介します。
入社前オンボーディング
例)
・会社見学
・社内報などの資料送付
・インターンシップ
・内定者同士や先輩社員との交流会
入社前オンボーディングは、入社までの期間が長い新卒採用の際に、主に実施されます。入社する前の段階で、採用する側だけでなく、採用される側もしっかり企業について知れる機会を提供することで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。
特に、インターンシップは実際に職場で業務をこなす体験ができるので、内定後の期間に余裕がある場合に導入している企業が増えています。
一方で、中途採用の場合は、内定から入社日までの期間が短いことが多いため、会社見学や社内報の共有など、できる範囲で行うと良いでしょう。
入社後オンボーディング
例)
・入社オリエンテーション
└企業理念や企業文化を伝える
└各部署や施設の紹介
・OJT
・歓迎会
・社長や経営陣との対話
オンボーディングにおいて、非常に重要な役割を果たすのが、入社オリエンテーションです。なぜなら、入社後数日は新入社員の不安も大きく、不安を解消できない場合、早期離職にもつながりやすいからです。
入社後オンボーディングで重要なポイントは人事部だけですべてを実施しようとしないことです。例えば、入社オリエンテーションでは社長や経営層から企業理念や企業文化について話してもらったり、各部署の紹介を各部署長に任せたりと、周りを巻き込みながら進めると効果的です。
早い段階で他の従業員との接点を作ってあげると職場にも馴染みやすく、入社後にストレスを抱えにくくなる効果を期待できます。
OJTなどを通じた「業務上のケア」とオリエンテーションや歓迎会などを通じた「人間関係のケア」両方の視点でのサポートが入社直後には必要でしょう。
継続して実施するオンボーディング
例)
・メンター制度
・1on1
・部署の枠を超えた交流会
・同期会
研修を終えて、独り立ちしたと思っても数ヶ月~1年は継続してオンボーディングを実施した方が良いでしょう。配属が決まり、実際に業務に取り組むことで、新たな不安や悩みが見えてくる時期が入社後数ヶ月の期間です。
継続して実施するオンボーディングでは、部署内や上司との関係構築だけでなく、部署を超えたつながりを意識するのがポイントです。例えば、他の部署の先輩社員にメンターになってもらい、定期的に面談を実施するなどが挙げられます。このような縦や横のつながりだけでない、斜めの関係性を組織につくることで、直属の上司に相談しにくい内容でも一人で抱え込むリスクを減らせます。
順調に見えている社員でも実は、会社や組織とのミスマッチを感じている場合も多くあります。原因が分かれば対処法もたてられ、事前に離職を防ぐこともできます。オンボーディングは中長期的な目線で取り組むようにしましょう。
オンボーディングの導入方法
実際にオンボーディングを実施するには、適切なステップを踏むことが重要です。人事部だけでなく、全社的に取り組む必要があるので、各部署との連携や事前準備をしっかりして取り組みましょう。
Step1: 人材ポートフォリオの見直し
オンボーディングに取り組む前に意識しておきたいのは、どのような人材がいつまでに必要なのかというプランです。オンボーディングの施策を検討する前に、必要な人材を明確化しておきましょう。
オンボーディングをスムーズに実施するには、求める人材像にマッチした人材を採用する必要があります。また、採用が決まってから入社するまでの期間や、入社してから現場に出てもらうまでの期間によっても準備できるオンボーディングの方法が変わってくるので採用の段階からオンボーディングの意識を持つことが重要です。
Step2: オンボーディングプランの作成
必要な人材が決まったら、具体的なオンボーディングのプランの作成に移ります。入社後1年間を目処に、スケジュールを組みましょう。基礎となる部分は共通化することをおすすめしますが、役職や担当する業務内容によって個別のオンボーディングプランが必要になります。
プランの作成時には、「何を目的に実施するのか」「どこをゴールにするのか」を明確にした上で検討しましょう。
Step3: 全社でのすり合わせ
オンボーディングを実施するには、新入社員に安心して入ってもらえるように、全社員でオンボーディングに関する共通認識を持っておくことが重要です。
「なぜ、オンボーディングが必要か」「新入社員に対してどのように接して欲しいか」など明確に提示できると良いでしょう。
即戦力が育つことは他の従業員にもメリットがあることなので、十分な協力体制を構築して新しい従業員を迎えいれましょう。
Step4: オンボーディングの実施
ここまで準備しておけば、オンボーディングは比較的スムーズに実施できます。人事部が相談役として機能し、新人社員が組織のメンバーと打ち解けやすい環境を目指しましょう。
また、従業員の自立を促すのであれば、スモールステップ法を活用して、小さな成功体験を積み重ねてもらう方法が効果的です。
入社前後だけでなく、継続してオンボーディングを実施できるかも重要なポイントです。
Step5: フィードバック
適したオンボーディングの形は、求める人材や組織の形態などによって異なります。オンボーディングが機能しているかどうかの見直しを定期的に行うようにしましょう。
見直しの際に有効なのが、エンゲージメントサーベイです。全社的に行うのも良いですが、入社後の従業員に絞って調査をするとオンボーディングのフィードバックに役立ちます。
エンゲージメントやサーベイの方法についてはこちらの記事をご参照ください。
「従業員エンゲージメントとは?従業員満足度との違いやエンゲージメントの種類について解説!」
人的資本経営・組織開発ならRECOMO
本記事では、オンボーディングの意味や目的、実際にオンボーディングを実施するための具定例や導入方法について解説しました。
オンボーディングによって、即戦力を育てられたり、早期離職を防止できたりするため、人材が定着し採用や育成にかかるコストも最小限に抑えられます。
一方で、数ヶ月~1年単位の長期的な取り組みとなり、人事部だけでなく、全社で取り組むべき内容なので運用できるか不安に思う方もいるでしょう。そんな方は組織開発の伴走者として、株式会社RECOMOが提供するRECOMO Xを検討してみてはいかがでしょうか。
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