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組織が拡大していく時に直面する課題は組織の人数の壁として「30人の壁、50人の壁、100人の壁・・・」などと表現されます。これらは事業と組織の成長スピードが合わないこと、組織が成長するにつれて関係性やコミュニケーションの複雑性が高まり、これまでとは異なる課題に直面することなどが要因となります。
ただし、これらの課題は程度の大小はあるものの多くの企業で既に起こっており、乗り越えてきた企業が多数あるという現実があります。今回は、一般的な人数の壁で起こりうることを紹介したうえで、CHROや人事責任者の視点で対処した方が良いことを解説します。
組織の人数の壁が起こる要因
はじめに、なぜ組織の人数の壁が起こるのか、をもう少し掘り下げて考えてみます。大きく分けると以下の5つの分類で課題が起きるパターンになります。
経営陣や人事の責任者は以下の観点を意識しながら、適切かつ先手を打った対策が求められます。それぞれ適切なタイミングで適切な対策を講じられないと、組織崩壊が起こるほどの高い人数の壁に直面することになります。
①コミュニケーションの複雑化
人数が増えるほど、情報の伝達経路が複雑化し、経営陣と現場の溝が生まれやすくなる。価値観の共有が難しくなる。
②仕組み・ルールの不備
小規模組織で機能していた仕組みやルールが、従業員規模が大きくなるにつれ不備を露呈することがある。また、形骸化が進みがちでそれらの変更や改革に大きな労力がかかる。
③ 役割・権限の不明確化
人数増加に伴い、役割分担や権限が不明確になりやすい。責任範囲の議論が生じる。
④マネジメント能力の限界
従業員規模が大きくなり階層が深くなるほどに、組織を統制する難易度が上がり、マネジメントの質や対話量が不足する。
⑤経営陣に求められる役割の変化
会社が成長し従業員規模が大きくなる段階ごとで、経営陣に求められる役割、持つべき視野・視座・視点のレベルが変化する。
次に、それぞれの人数のタイミングで起こる壁をもう少し掘り下げて解説していきます。
50人の壁
従業員数が50人前後になってくると、社長が会社のあらゆる面を細かく見渡すのが困難になってくるタイミングです。権限委譲が本格的に行われる時期であるこのタイミングからコミュニケーションが複雑化したり、マネジメントが階層化することで、課題が露呈しやすくなります。
そのため、人事施策への期待も高まり、人事として「本格的に」色々な施策の実行を検討するタイミングとなる場合が多いです。例えば、評価制度の策定・本格運用だったり、人事部の人員増加や求める機能の増加、兼務の解消などもこれくらいの従業員規模の際に実行されることが多いです。
このタイミングでは実際にはまだCHRO(最高人事責任者)が設置されていない場合も多いかと思いますが、人事機能のトップに求められる役割は以下の通りです。
⚫︎経営と現場をつなぐ社内での翻訳機能を担う
・社長の考えをしっかりと理解し“シンクロ”する
・的確にメンバーに伝える仲介役を担う
⚫︎人事部門を確立する
・採用プロセスと人事制度(評価制度等)を構築する
・兼務ポジションの適正化を行う
・その他人事系施策も含めしっかりと“旗振り役”を担う
⚫︎組織の課題が根深くないこの時期に一歩先を見据えた視点を持つ
つまり、今後の組織拡大を見据えて、基盤をしっかり作り社長の右腕・左腕になることが強く求められるタイミングです。
参考記事
【50人の壁】人数の壁に挑む経営者のための人事戦略入門
【50人の壁】30人→50人へ拡大する際に社内で起きる変化と経営が先手を打つ3つの対策【動画解説】
100人の壁
従業員が100人規模になってくると、より組織は複雑化していきます。このタイミングでは複数事業が走っていることがほとんどで、マネージャーなどの役職者の人数も格段に増えているはずです。社内調整の難易度もググッと上がるタイミングです。
50人規模までの人事としての課題は、いかにいい人材を集めるかという点にフォーカスされがちですが、このタイミングでは組織づくりやマネージャー育成が主要な課題と変わっていきます。育成やマネジメントの観点だと、優秀だがここまでの会社の成長の功労者であるマネージャーの降格が難しくなってくるタイミングで、頭を悩ませることが増えてくるでしょう。同時に、メンタルヘルス不全に陥る社員が出始めるタイミングもこの時期が多いです。このような背景からも人事部門の役割が増大します。
また、このタイミングで組織に関する“不要な”噂(個人的な主観からのネガティブな意見を周囲にまき散らす人が出てくる)が流布されやすくなるため、経営陣からのメッセージを適切に伝達することが不可欠になります。
このタイミングでは、CHROが設置も検討される、もしくは設置されるタイミングでしょう。それはこのような人に関する問題が頻繁に起きるタイミングであるからで、しっかりと経営視点で人や組織に向き合う必要があるためです。
人事のトップがこのタイミングで求められる役割は以下の通りです。
⚫︎話す相手が社長だけでなく経営陣へと変化する
・それぞれの価値観を理解し、経営陣同士、また、経営陣とメンバーの仲介役を務める
・経営陣と対等に話ができるよう、経営の視野・視座・視点を持つことが強く求められる
⚫︎ネガティブな対応をしっかりと行う
・メンタルヘルス対策を講じる
・優秀で会社の功労者であるものの、組織成長の変化に対応できないマネージャーの降格をうまく調整する
⚫︎マネジメントとの対話量を増やす
・マネージャーが増え負担が増えるのでマネージャー自身のケアを行う
・同時にマネージャーより現場の課題を吸い上げる
参考記事
【100人の壁】組織課題の見つけ方と解決方法【動画解説】
200人の壁
200人の規模感の組織ではCHROの存在は必須になってきます。。
その理由として、このタイミングは事業の成長スピードと組織の成長スピードにギャップが顕著になります。その結果、以下のような事象が起こる確率が急激に上がるでしょう。
・これまで構築してきた仕組みやツール、ワークフローが形骸化
・部門や部署間に壁ができ、一体感が失われる
・経営陣に現場の生の声が届かなくなる
・経営から現場への理念や価値観の共有が困難になるリスクが高まる
このタイミングでの人事のトップには非常に大きな役割が求められます。例を挙げると以下のような対応が必要になります。。
⚫︎事業成長と組織成長のギャップを最小化する施策を立案・実行
・部門間の壁を取り除き、一体感を醸成する施策
・理念が形骸化しないための施策
⚫︎経営陣の見直し
・組織成長を阻害する要因が経営陣に見え始めやすい
・“これまでの功労者”の対応を注意しながら行う
⚫︎形骸化しがちな仕組み・ツール・ワークフローを見直し・改善
⚫︎現場の生の声を経営陣に確実に届ける仕組みを構築
⚫︎優秀な新人と既存メンバーとのギャップに対処
また、これらを実行するために経営や現場それぞれとのコミュニケーションや信頼関係の構築が非常に重要になってきます。
このタイミングで最も注意すべき点は、事業成長と組織成長のギャップを感じる時や課題が顕在化するタイミングでは、すでに組織崩壊がかなり進んでいる可能性があることです。これまでの人数の壁と比較すると課題が露呈するタイミングが遅くなります。そういった観点でも、先回りの対応だったり抜本的な改革を急ぐ必要があるタイミングであるといえます。
参考記事
150人の壁|ミドルマネジメントに課題を感じているなら経営が行うべき4つのこと
500人の壁
従業員数が500人規模になってくると、経営陣と現場の溝が一層広がっていきます。この規模感でマネジメント層が育っていなかったり、理念がしっかり浸透していなかったりすると成長スピードは一気に弱まります。また、このタイミングが社内の雰囲気が変化しやすくなります。具体的には、改革よりも安定を優先する風潮が強まり、前例主義に囚われがちになることが多いです。さらに、部署や派閥による“政治的な動き”が活発化し、各種戦略策定が難航しがちです。
また、上場のタイミングなどにもよりますが、株主重視の姿勢が強まったりステークホルダーが増加することでも影響も見えやすい時期です。
一方で、会社規模が大きくなるに伴い認知が向上している場合が多く、採用での応募数は増加しているパターンが多いでしょう。それが良い反面、応募者対応に時間を多くかけられることになり、抜本的な改革に手が回らなくなるタイミングです。また、評価制度が評価をすることが目的になりやすいタイミングでもあります。個々人の可能性を伸ばすという本来の目的が希薄化するリスクは離職率の増加に繋がりかねません。
この規模感での人事のトップに求められることは以下のような内容です。
⚫︎経営陣と現場の溝を最小にする施策の立案と実行
・理念の形骸化を防ぐ
⚫︎安定志向や前例主義の悪影響を排除する
・引き続き仲介役となり、本質的な課題を探し続ける
・挑戦できる風土を高める
⚫︎人事部のマネジメント
・採用、評価制度、育成など本質的な目的への立ちかえり
・多様性が広がるタイミングでの抜本的な改革
・既存マネージャーと中途メンバーの能力差への対応
人的資本経営・組織開発ならRECOMO
以上のように組織の成長と組織の課題は常に同時並行で生じ、なかなか尽きることはありません。よりよい組織を創っていくためには、会社の成長を見通し、これらの課題に対して先手を打って備えていくことが大切です。
しかし、このような組織の成長フェーズを複数経験し、対応してきたような経験豊富な人事のトップの人材が社内にいなかったり、採用しようにもなかなか求める人との出会いがない、とお困りの経営者の方も多いのではないでしょうか。
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