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事業や組織の目標を達成したい!という思いはマネジメントを行う上で誰しも考えることかと思います。「目標を達成する」ための方法はいくつもあり、どれを採用するべきか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
今回は、MetaやGoogleなどで広く採用されている目標の管理方法である「OKR」について、実際の運用事例をご紹介します。
目標管理手法「OKR」
OKRとは
OKRは「Objectives and Key Results」の略称で、高い目標を達成するために用いる目標管理のフレームワークです。直訳すると「目標と、主な結果」となり、達成すべき目標と目標達成のための主要な成果とをさします。
従来の目標達成計画や管理に比べて、明確かつ一定のペースで計画を進めていくということが特徴です。
OKRを導入する目的としては、会社や組織のあらゆる人や事業組織で「同じ方向」へ取り組み、事業や組織の成長速度をぐんと向上させることにあります。会社全体の目標から組織・チームの目標が明確に繋がっており、策定から評価・再設定等までをスピーディに行うことができます。
それでは、O・KRそれぞれの項目について説明いたします。
O(目標)
OはObjectの頭文字で「目標」を意味するものです。
OKRにおいての目標は、正確に数字で表すものでなく、より抽象度が高くシンプルであることが重要です。また、目標の設定時に「ストレッチゴール」と呼ばれる達成までに背伸びの必要な目標をおくことが推奨されています。。これは、達成の難易度をあえて少し上げることで、チームメンバーのパフォーマンスを高める効果が得られるためです。
KR(主要な結果)
KRは二つ合わせてKey Resultの頭文字で「主要な結果」を意味します。
これは、先の目標(Object)を達成するための進捗等を明示するものです。Oが比較的抽象的に表されるのに対し、KRは数字で正確に表します。
Key Resultを定める際の観点は大きく2つあります。1つ目は行動ベース、2つ目は価値ベースです。
まず、行動ベースとは、「〜を行う」といった行動を測定するものです。
しかし、この観点はあまり推奨されていません。行動を結果としておいてしまうことで「行動すること」が目的となり、本質から遠ざかってしまう恐れがあるためです。
一方で、価値ベースとはある行動に起因して、組織や顧客に与える価値を測定するものです。この観点は主に「〜にへらす」「〜へ増やす」といった形で示します。
他のフレームワークとの差
事業を行っていく上で、OKR以外にも数多くの目標管理・測定方法があります。KPIやKGIなどの名称は耳慣れている方も多いことでしょう。
これらのフレームワークとの差は「OKRはより柔軟である」というところであるといえます。KPIと比較した際は理想とする目標達成率、KGIと比較した際は目標の位置付け、MBOと比較した際は人事評価に直接活用するのかという点で大きくそれぞれ異なっています。
OKRの運用にあたって
実際にOKRを運用したい!と思った際、どのように進めていくものなのでしょうか。
導入を行う上で大きなポイントとなることを3つお伝えします。
①目標設定を高めにする
OKRを行う上で重要なことの一つは高めの目標を設定することです。このとき「適度に高い目標」であることが重要となります。
達成度が60〜70%のOKRを立てることがよいとされています。
運用した際に100%達成できる目標を立てると、挑戦してもしなくとも達成できる状況になってしまいます。
するとメンバーの挑戦心はどうしても損なわれてしまいがちです。一方で、どう考えても達成できない目標を設定するとメンバーの士気は下がってしまいます。
このように、挑戦的で結果を測定できる目標を立てることがポイントです。
②人事評価から独立させる
OKRにおいて目標を設定する際に、人事評価と連動させないということも重要な項目の一つです。
OKRの達成率をそのまま人事評価に連動させてしまうことには大きなデメリットが発生します。組織の目標を踏まえて個人目標を立てるときに、人事評価が低下することを恐れて挑戦した目標設定をできなくなってしまうからです。
高い目標に挑戦し、達成のために意欲高く行動するためにも、OKRの達成状況と人事評価とをそれぞれ独立させることが必要になります。
③目標設定の意思決定を会社全体で行う
3つ目の重要なことは、OKRの導入時に上層部のみで目標を決め都度トップダウンで提示するのではなく、会社全体で決めて、全てのメンバーがいつでも見ることができる状態にしておくことです。そうすることで、実際の業務に活かしやすくなり、OKRの導入が成功に一層近づいていくでしょう。
目標を設定する際には、メンバーを巻きこみ意見を聞きながら決めていくことで、目標に対する納得感を高めることが必要です。メンバーとの間に意識や気持ちの溝が生まれてしまうことを防いだり、目標に対して当事者意識を持ってもらったりという効果を得ることができます。
これからの会社の目標について、積極的に話をしていくこともとても有効です。会社内で多くの人に共有することで、メンバーの団結が強まったり、OKRの効果を期待したりできます。
OKRは多くの企業において運用されています。OKRについて正しい運用方法を身につけ、組織の目標達成に活用してみることで、会社の成長に繋がることでしょう。
それでは実際RECOMOメンバーの運用経験等についてご紹介いたします。
【事例】RECOMOメンバーの経験したOKR
株式会社RECOMO 代表取締役CEO 橋本 祐造
OKRが世の中に広まったのはグローバルではインテル、Googleで活用され、その流れで日本ではメルカリが活用したことがきっかけになったと思います。
今まで行っていたMBO(目標管理制度)から、(流行っているので)OKRに切り替えて評価に使いたい、という相談を受けることもありますが、根幹の考え方が全く異なるので注意が必要です。
MBOは「一人一人の目標を積み上げて集めた先に部門の目標達成、会社全体の目標達成がある」というボトムアップ型の仕組みです。中長期的に雇用が継続して、一人一人の成長にじっくりと取り組む際には効果的に働きます。ただ、変化率が高く、会社全体の目標や方向性が頻繁に変わる場合には、毎回一人一人の目標から考える必要があるので、「ずっと目標設定の時間が続く。気づいたら評価の時期がやってくる」ということが起きやすくなります。
OKRは「会社全体の理想的な目標からトップダウンで挑戦目標を部門、チームに割り振っていく」というトップダウン型の仕組みです。会社の成長率が高く、社内外の環境の変化率が高い時に効果的に機能します。また常に110%、120%上の目標値が設定されるので、全力で取り組むことで、企業としての伸びしろが生まれます。一方で、OKRでは一人一人の目標値まで落として設定すると、管理が大変になるので、個別の成長まで細かく見ていくのは難しい状況になりやすいです。
OKRの導入が成功した運用としては、全社の業績目標はOKRで行い、個人評価は会社の行動基準(バリュー)とグレード(役割)ごとで求められる貢献行動で評価する、というものです。
全社の業績目標の達成に向けて全員が努力することで、会社としての成長の伸びしろが生まれ、結果として業績が向上し、昇給原資を作れるようになります。またバリューに沿った行動をしている人を評価する、グレードで求められる貢献行動で評価することで、会社で活躍するのはバリューや貢献行動をしている人になり、ありたい状態の企業文化を生み出すこともできるようになります。
OKRは3ヶ月〜6ヶ月ごとに経営陣で議論して設定をする。バリューやグレードごとで求められる貢献行動の内容は、全社を巻き込んだプロジェクトにしながら、メンバーの意見も反映させる形で策定すると、全体で目標が「自分事」として捉えられるようになっていきます。
RECOMO Xプロジェクトメンバー 小澤 衣里佳
知り合いが勤める会社で最近OKRが導入され、「良かった面もあればこれから改善しなくてはいけない面もある」状況になっているという話を聞きました。
・良かった点
①1on1により、全社的に上司と部下とのコミュニケーションが増えた
②行動評価に基づいて、評価されるべき人がきちんと高い評価を得られるようになった
・今後改善すべき点
①1on1をきちんと回せない管理職が出てきている(時間的余裕が作れない、1on1に取り組む意義が理解されていない)
②マイクロマネジメントしなくてはいけないジュニア層の社員が多いため、今の段階ではMBOの方が合っているのではという意見もある
株式会社RECOMO 髙杉 美緒
過去お付き合いがあった会社が私の参画時に既にOKRを活用していましたが、完全に評価制度のひとつとなっていました。
本来「達成できない目標」を設定しているかと思いますが、ほぼ100%の達成、人によってはそれ以上の達成度合いが垣間見えており、そもそもの理解と目標設定の難しさを感じました。
良かった点は、目標が会社全体で共有されているので目指すべき方向性がとてもわかりやすかったことです。また、1on1などチーム内でのコミュニケーションはとてもよく取れていた会社だったと振り返っても思います。
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