プロティアンキャリアとは?従来のキャリア観との違いや取り組むべき組織開発を解説!

目次

人生100年時代と言われる中で、「プロティアンキャリア」という言葉が注目されています。プロティアンキャリアとは、時代の変化に流されず、柔軟に自分を変化させながら成長していくキャリア形成のことです。

豊かな老後を迎えるには、長く働き続ける必要があります。そのためには社内の与えられた環境下で成果を出すだけでなく、様々な環境下で結果を出せる柔軟さが求められます

企業の組織開発においても、プロティアンキャリアの考え方を理解し、「従業員と企業の相互依存」や「囲い込み型の採用」からの脱却が必要です。プロティアンキャリアの考え方を組織開発に組み込むことによって、従業員のエンゲージメントや組織や事業の持続的な成長が見込めます。

本記事では、プロティアンキャリアの形成方法やメリット、組織開発に取り入れるべきポイントについて解説します。

プロティアンキャリアとは何か?

プロティアンキャリアとは従来のキャリア観とは大きく異なるキャリア観です。まずは、プロティアンキャリアとは何なのかについて、注目される背景や従来のキャリア観との比較をしながら解説します。

プロティアンキャリアの意味

プロティアンキャリアとは、環境によって変幻自在に変化するキャリアのことです。組織にとらわれずに従業員が主体的にキャリア形成を行います。

プロティアンキャリア理論の普及を行っているプロティアンキャリア協会では、プロティアンキャリアについて以下のように定義しています。

”キャリアは「結果」ではなく、個々人が「何らかの継続経験」を通じて「能力」を蓄積していく「過程」を意味します。”
参考:プロティアンキャリア協会

プロティアンキャリアでは、組織を「キャリア形成のための場」として捉え、個人そのものが社会環境に合わせて生き抜ける力を身に着けます

また、「プロティアン」はギリシャ神話のプロテウスが由来となっています。プロテウスは環境によって火になったり、水になったりと変幻自在に変化する神として知られています。

プロテウスのように環境によって変幻自在に変化するキャリアを実現することがプロティアンキャリアであり、そのような人材をプロティアン人材と呼びます。

プロティアンキャリアの書籍

プロティアンキャリアは、1976年に出版されたアメリカのダグラス・Tホール教授の『プロティアン・キャリア』によって最初に提唱されました。日本では尾川丈一氏によって2016年に日本語訳版が発売されています。

ダグラス教授の考え方を現代風にわかりやすく深化させて解説しているのが、『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』です。前述のプロティアンキャリア協会の代表も務める田中研之輔氏によって執筆されています。こちらの書籍は現代版プロティアンとも呼ばれ、ダグラス教授の『プロティアン・キャリア』と『LIFE SHIFT(ライフシフト)』の考え方を組み合わせた最先端のキャリア理論になっています。

本格的にプロティアンキャリアについて学びたい方は、田中氏の著書を参考にすると良いでしょう。

注目される背景

プロティアンキャリアは1976年に発表された理論ですが、近年改めて注目されています。注目されている背景には以下の2点が関係しています。

・終身雇用の崩壊
・人生100年時代の到来

従来の雇用形態は終身雇用が一般的であったため、組織内で成果を出し、昇給や昇進をしていくことが一般的なキャリアの目標とされていました。しかし、景気の低迷や市場の激しい変化によって終身雇用を維持できない企業も増えています。そのため、その会社でしか通用しないスキルを育てるのではなく、どのような環境下でも通用する柔軟なスキルを身につけられるキャリアを築いていく必要性が高まっています

『LIFE SHIFT(ライフシフト)』によって示された「人生100年時代」もプロティアンキャリアが注目される背景に大きく影響しています。ある程度の人生設計ができていないと、老後不安な30年、40年を過ごすことになります。様々な環境に対応できるスキルがあれば、定年退職後にフリーランスとして活躍することもでき、安心した老後を過ごすことが可能です

このような、環境の変化から自身のキャリアについて主体的に考えなくてはいけない時代に突入しています。企業側もこれらの背景を理解した上での組織開発や人材戦略を練る必要があるでしょう。

従来のキャリア観との違い

従来のキャリア観との最も大きな違いは、キャリアを管理する「主体」です。従来のキャリアでは、組織を中心にキャリアが考えられてきましたが、プロティアンキャリアでは個人が主体となってキャリアを形成します

従来のキャリア形成はどうやって「昇給や昇進」をするかという視点で考えられることが多かったですが、プロティアンキャリアではどうやって個人の「自由や成長」を手に入れるかという視点で考えます。

キャリアを管理する主体が、組織から個人へと変化し、組織をまとめる管理職や人事担当者もこれまでとは異なる視点で従業員のキャリアを捉えることが求められています

プロティアン人材を構成する要素

プロティアンキャリアを実現する人材がプロティアン人材です。プロティアン人材は「アイデンティティ」と「アダプタビリティ」の2つの要素によって構成されます。以下ではそれぞれの要素について解説します。

アイデンティティ

アイデンティティとは、「自分は何者であるのか」を正しく理解することです。具体的には、「自分は何を目指しているのか」や「大切にしている価値観」「自分が持っている能力」などについて自己理解ができている状態を指します。

プロティアンキャリアでは、自分らしいキャリアを目指すための自己理解が必要不可欠です。プロティアン人材は、自分の「現在地」と「ゴール」を正しく分析できる力を持ちます。

アダプタビリティ

アダプタビリティとは、あらゆる環境に適応できる能力のことです。従来のキャリア観では、組織内でいかに柔軟に動けるかが求められてきました。一方で、組織外も含めた「仕事に対する柔軟性」がプロティアン人材には必要です。

そのためには、環境を正しく理解するための洞察力や環境に合わせて自分を変化させるための自己学習などが求められます。これらを他人に言われたからではなく、主体的に自分のキャリア形成のために動ける人材がプロティアン人材です。

「アイデンティティ」と「アダプタビリティー」のどちらか一方だけでは、プロティアンキャリアは実現できません。それぞれをバランスよく育てることでプロティアンキャリアが実現します。

プロティアンキャリアのメリット

プロティアンキャリアは従業員個人の成長や自己実現だけでなく、組織にも良い影響を与えます。従業員個人のメリットを2つ、組織としてのメリットを2つご紹介します。

従業員個人のメリット

やりがいをもって働ける

プロティアンキャリアの主体は自分自身です。現在の仕事をキャリア形成のための必要な要素として捉えるようになるので、「やらされ感」から脱却し、やりがいを持って仕事に取り組めるようになります

仕事の成功が自身のキャリアの成長にも直結しているという感覚を持てるため、モチベーションの向上が期待できます。

自分の市場価値が高まる

プロティアンキャリアを実現することで、人生100年時代に対応できる人材になります。あらゆる環境で活躍できるため、老後の心配をすることなく、安定した生活を実現できます。

市場価値が高まることで、転職や独立をしなかったとしても、組織内の評価も結果的にあがるため、従来のキャリアで目指されてきた「昇給、昇進」も可能です。

経営者・人事担当者にとっての価値

従業員のエンゲージメント

プロティアンキャリアによって、個人と組織の関係性が向上します。プロティアンキャリアではキャリアの主体は個人のため、組織はキャリア形成のためのサポートにまわります。

結果として自分のキャリア形成には、今の会社が必要不可欠と感じるようになり、組織へのエンゲージメントにつながります。特に、既存のキャリア観によって自分の地位や役職に悩んでいるミドル層への影響は大きいでしょう。

優秀な人材の確保

プロティアンキャリアを推進する組織では、優秀な人材が定着し、採用活動にも良い影響を与えます。仕事に対してのモチベーションが高く、組織へのエンゲージメントも高いため、風通しの良い組織体制を構築できます。

また、プロティアンキャリアによって市場価値が高い人材が育つことで、ビジネスを取り巻く環境が変化しても、柔軟に対応できます。しなやかな組織体制になることで結果として事業の成長にもつながるでしょう。

プロティアンキャリアの形成・進め方

個人がプロティアンキャリアに取り組む際の進め方について3つのステップにわけて解説します。

①キャリアを定義する
②過去・現在・未来のキャリアを書き出す
③キャリア実現のために行動する

①キャリアを定義する

まずは、キャリアを再定義することから始めます。キャリアは自分自身で管理・設定するものであることを理解し、「外的キャリア」と「内的キャリア」にわけて考えます

外的キャリアは、職歴や資格などの目に見えるもので、内的キャリアは価値観や習慣など目に見えないものです。このように「キャリアとは何か」を明確にしておくことで以降のステップをスムーズに進められます。

②過去・現在・未来のキャリアを書き出す

キャリアの定義づけができたら、「過去・現在・未来」のキャリアを紙に書き出します。書き出す際には、仕事に関することと生活に関することでわけて書き出すとわかりやすいです。

特に重要なのは、「現在地を把握すること」と「ゴールを明確にすること」です。現在地とゴールまでのギャップを理解することで、最後のステップである「行動」に移せます。

③キャリア実現のために行動する

最後にキャリア実現のための行動に移します。キャリア実現のための行動は、自身の目指しているゴールによってさまざまです。

例えば、「社外コミュニティに定期的に参加する」「新しい分野の副業を始める」「ビジネス書を毎月読む習慣をつける」など具体的な行動に落とし込みます。

行動するだけでなく、定期的に②に戻って自身のキャリアについて見つめ直す機会が作れると、なお良いでしょう

組織開発としてのプロティアンキャリア

プロティアンキャリアは、従業員個人が主体的にキャリアを形成する一方で、組織としてのサポートがないと実現は難しいでしょう。組織として、サポートすべき施策を2つご紹介します。

対話の場をつくる

まず、重要なのは対話の場をつくることです。組織内での対話、組織外での対話のそれぞれが求められます

組織内の対話では、定期的に1on1面談を実施するなどして、従業員個人が目指しているキャリアについて理解し、キャリア形成について一緒に考えられると良いでしょう。また、成長が停滞してしまっているミドル・シニア層の従業員に対しては、社外の人間と対話する機会を作り、刺激を受けてもらうことも有効です。

このように組織内外の対話の機会を意図的につくることは、組織が取り組むべきプロティアンキャリア実現のための組織開発の1つです。

リスキリングの実施

対話によって従業員の目指すキャリアを理解できたら、リスキリングによってスキル面の補助をすることも検討しましょう

リスキリング(リスキル)とは、現在とは異なる職務や新たな分野のスキルを従業員に獲得させることを指します。

足りていないスキルや知識をリスキリングで補いながら、従業員の新しい挑戦を支援できるような組織体制を構築できると良いでしょう。

人的資本経営・組織開発ならRECOMO

本記事では、プロティアンキャリアの形成方法やメリット、組織開発に取り入れるべきポイントについてご紹介しました。

プロティアンキャリアは、従業員にとっても企業にとってもメリットの大きいキャリアの考え方です。ただし、「自分の目指しているキャリアがわからない」と悩んでしまう人も多く、企業側のサポートも重要になります。

プロティアンキャリアの考え方を採り入れた組織開発に興味や関心のある方は、株式会社RECOMOが提供するRECOMO Xを検討してみてはいかがでしょうか。

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