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株式会社良品計画は、無印良品やMUJIブランドの商品開発や世界各国での販売までを行うグローバル企業です。従業員数は世界で20,000名近くとなっており、店舗数も1,000店を超えています。
「良品計画の成長の背景には何があるのか」
「グローバル企業をどうやって経営しているのか」
「良品計画は何を目指していて、今後どうなるのか」
このように気になる方も多いのではないでしょうか。そのときに、統合報告書を読み解くことで、その会社の歴史や理念、戦略がわかります。
本記事では、人的資本経営の視点から良品計画の統合報告書(MUJI REPORT2022)を読み解きます。良品計画の統合報告書は100ページ以上あるのでポイントだけおさえたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
良品計画の歴史
具体的な内容に入る前に、良品計画の歴史についておさえておきましょう。
良品計画は、1980年に株式会社西友のPBブランドとして「無印良品」が誕生しています。元々はクレディセゾンやそごうなどと同じセゾングループの1つでした。1989年には株式会社良品計画として会社を設立し、2年後には海外進出を果たしています。
しかし、会社設立後の経営は厳しく、その後は11年も赤字が続いています。2001年に社長に就任した松井忠三氏によって、大きな経営改革が行われました。
具体的には、これまでの経験主義/個別主義の企業風土から、マニュアル化やチェーンオペレーションといった標準化の企業風土に転換されました。特に有名なのは、販売オペレーションマニュアル「MUJI GRAM」で、徹底した標準化を行うことで2002年には黒字化し、今の良品計画があります。
現在では世界各国に店舗を拡大中の良品計画ですが、松井氏が取り組んだ独自の企業風土形成や「MUJI GRAM」などの徹底した標準化を背景として、今の良品計画が実現しているのではないでしょうか。
良品計画の理念と戦略
徹底した標準化によって成功を収めた良品計画ですが、掲げている理念や理念実現のための戦略について確認しておきましょう。
良品計画の理念
“「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた
商品、サービス、店舗、活動を通じて
「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献する。”
引用:良品計画 企業理念
加えて、
「使うことで社会を良くする商品を、手に取りやすい価格で提供すること」
「各地域のコミュニティセンターとして地域への良いインパクトを実現すること」
を使命として掲げています。
「無印」の名前のとおり、ブランド化して高く売るのではなく、社会に求められている質の高いものを適正価格で販売することが徹底されており、商品開発の基準になっています。また、これまで標準化によって成長してきた良品計画ですが、さらなる成長のために「個店経営」を掲げており、各地域に根付いた店舗づくりを目指しています。
理念から戦略への落とし込み
社会をベースにした商品設計
良品計画では、1980年の無印良品誕生から現在まで商品設計の視点が何度も変更されています。
年代 | 商品設計の視点 |
1980-2000年 | 無駄を省き、生活者に本当に役に立つ商品の制作 |
2001-2015年 | 強い嗜好性を誘う商品ではなく、 「これでいい」という理性的な満足感を与える商品設計 |
2016-2020年 | やすらぎを感じるくらし全体の提案で社会課題の解決に貢献 |
2021年以降 | 本当に必要な商品だけを、手に取りやすい価格で提供し、地域との共存を目指す |
このように、良品計画が社会に貢献できる価値はどこにあるのかを軸に良品計画の商品や店舗づくりが行われています。
経営戦略と連動した人材戦略
良品計画では、「感じ良い暮らしと社会の実現」の理念達成のために「地域への土着化」を経営戦略に取り入れています。土着化とは、文化などがその土地に根付くことで、良品計画は地域の文化や独自性に合わせた店舗づくりを目指しています。
この経営戦略の実現のための人材戦略の1つが「3年目店長プロジェクト」です。3年目店長プロジェクトは、入社2年で店長になるためのスキルやスタンスを入社時からトレーニングする良品計画独自のOJTプログラムです。
すでに2022年9月時点で130名以上の店長が誕生し、店舗経営をしています。若い人材を登用することで、これまでの徹底した標準化にとらわれない新しいリーダー人材の育成を狙っています。
このように、良品計画では理念から丁寧に経営戦略や人材戦略へと落とし込まれており、「3年目店長プロジェクト」などの理念実現のための具体的な施策が数多く取り組まれています。
参考になる人的資本情報開示のポイント
良品計画は、人的資本の情報開示の好事例としてさまざまなメディアで取り上げられるほど、人的資本経営に力を入れている企業です。具体的にどのような部分で優れているか、3つのポイントにわけてご紹介します。
人的資本経営への本気度を示す
まず、統合報告書から感じられるのは人的資本経営への本気度でしょう。例えば、成長のために重要な項目として、「6つの基盤」を掲げています。その中で、項目の1番目は「人的資本」となっており、人的資本に関するページ数も多く、非常に充実しております。
また、統合報告書はこれまでの企業の歴史や理念などのイントロダクションから始まり、次に現会長の挨拶が記載されていますが、タイトルは「公益人本主義経営への挑戦」です。
公益人本主義経営とは、オーナーシップを持った社員を事業活動の主役に据え、地域に根差した個店の活動、個々の社員や事業関係者の活動が公益に寄与することと示されています。文中にも「人」の重要性が解かれており、経営戦略の中心に「人」があることがよくわかります。
人的資本の情報開示では、定量的なデータも大切ですが、このように代表自らが人的資本経営への思いを示すことも情報開示の重要なポイントでしょう。
人材戦略の明確さ
良品計画では、人材戦略として「6つの柱」を掲げ、具体的な施策まで落とし込んでいます。例えば、柱の一つに「多様な社員が個性を発揮し、自律的に考え、自発的に行動するために、健全な企業風土を醸成する」があります。
これを達成するための手段として、「全社エンゲージメント調査での企業風土の可視化」や「理念体系についての全社教育、継続的な対話の推進」などに取り組んでいます。
人材戦略の方針を明確に提示している企業は多いですが、実際の取り組みまで具体的に記載できている企業は少ないのではないでしょうか。
開示指標の多さ
最後に、人的資本の情報開示指標が多い点も参考にしたいポイントです。例えば、障がい者雇用率やチャイルドケア制度の平均取得者数などの指標があります。特に、女性の雇用に力を入れており、女性の店長比率、役員比率、従業員比率など女性雇用の指標だけでも5項目以上の開示指標があります。
開示指標が多いほど、モニタリングやサーベイのコストがかかりますが、良品計画のようにさまざまな視点から情報開示を行うことで社内外のステークホルダーとのコミュニケーションや戦略策定に役立ちます。
良品計画の今後は?
統合報告書の中では「第二創業」という言葉が何度も繰り返し使われています。これは良品計画がこれまで育ててきた「標準化の文化」から、「地域に土着した個店化」へのステップアップを示していると考えられます。
良品計画の良さである標準化と個店化のバランスを取ることが良品計画の今後の課題でしょう。地域を変えたいという強い思いを持った若い人材の採用とそれをサポートするこれまでの良品計画を支えてきた中堅以上の社員が手を取り合う構図が作れると、良品計画が目指している地域と共存する店舗づくりが推進されていくのかもしれません。
良品計画は人的資本の情報開示において、定性的にも定量的にも優れている企業です。地域への土着化に向けてさらに人的資本に力を入れていくと考えられます。特に、人的資本経営に取り組む企業や第二創業期の企業は今後も注目すべき事例です。
人的資本経営・組織開発ならRECOMO
本記事では、良品計画の取り組む人的資本経営について統合報告書を読み解きました。
良品計画では、「感じ良い暮らしと社会の実現」という理念から丁寧に経営戦略や人材戦略に落とし込み、社会の変化に伴い柔軟に戦略を変えています。
理念から戦略への落とし込みは、現状の組織の分析や課題の可視化など領域が多岐に渡り、自社内だけで解決することが難しい場合も多いです。人的資本経営の伴走者として、株式会社RECOMOが提供するRECOMO Xを検討してみてはいかがでしょうか。
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