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サイバーエージェント株式会社は経済産業省が2022年5月に公表した「人材版伊藤レポート2.0」で事例として取り上げられるほど、意欲的に人的資本経営に取り組んでいる企業です。
人材版伊藤レポートは低迷している日本企業の収益性を改善するために必要な組織体制についてまとめた報告書です。本報告書でも示された通り、経営戦略と人材戦略の連動は収益性の改善に直結しており、人材を企業の“資本”として捉える人的資本経営の重要性が高まっています。
本記事では、「人材版伊藤レポート実践実例集」と「CyberAgent Way 2022 統合報告書」で示されたサイバーエージェントの人的資本経営の取り組みについてわかりやすく解説します。統合報告書は100ページ近くあるので、ポイントだけおさえたいという方は是非参考にして下さい。
サイバーエージェントの歴史
まず、サイバーエージェントがどのような会社なのかについて確認しておきましょう。
サイバーエージェント株式会社は、1998年に現在も代表取締役社長を務める藤田晋氏によって設立されました。サイバーエージェントで特徴的なのは「注力する事業分野を数年おきに変えている」点です。今では、動画配信事業やゲーム事業の印象もありますが、創業当時は「営業代行」と「インターネット広告」の会社でした。
創業から2年後の2000年には、マザーズ市場に上場し225億円の巨額調達をするなど、藤田氏は当時の上場企業の最年少社長として注目されました。
※現在は東証プライム市場へと市場変更されています。
その後は、2004年~メディア事業(アメーバブログ)、2009年~ゲーム事業(Cygames)と動画配信事業(AbemaTV)、2018年~アニメ制作事業を開始しており、事業の多角化を進めています。
サイバーエージェントの理念と戦略
パーパス
「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」
ビジョン
「21世紀を代表する会社を創る」
パーパスやビジョンから藤田氏の「世界に誇れる日本企業を創りたい」という強い思いが読み取れます。そしてパーパスの「新しい力」にはこれからの日本を担っていく若い人材の力という意味が込められているのではないでしょうか。
統合報告書の藤田氏のコメントには「素晴らしい会社を作るには良い人材を採用し最大限能力を発揮してもらえる環境をつくることが重要」「サーバント・リーダーシップが私のリーダーシップの原点」という言葉があります。
サーバント・リーダーシップとは、支援型のリーダーシップで従業員がどうすれば能力を最大限発揮できるかを第一に考えるリーダーシップの手法です。サイバーエージェントでは、若い人材が挑戦しやすい環境が整えられています。
CHOの曽山哲人氏も、数年おきに大きく事業モデルが変化することに対応できているのは、事業開発力や運用力などの従業員が持つコアスキルにあるとコメントしています。
社長やCHOのコメントだけでなく、サイバーエージェントの統合報告書に登場する「人」の数が非常に多いことからも、経営の中心に「人」があることが伺えます。
参考になる人的資本経営のポイント
ここからは、具体的にサイバーエージェントではどのような人的資本経営の施策が取られているのかを解説します。特に、多角的な事業展開や若い人材の活用を検討している方には参考になる事例です。
今回は3つの人的資本経営のポイントに絞って解説します。
事業拡大に連動した継続的なリスキリング
前述の通り、サイバーエージェントはさまざまな事業モデルを展開している企業です。サイバーエージェントでは、事業拡大に必要な人材ポートフォリオを事前に選定し、社外人材の登用や従業員のリスキリングによって人材を確保してきました。
リスキリング(リスキル)とは、現在とは異なる職務や新たな分野のスキルを従業員に獲得させることを指します。人材の採用だけだと急速な事業の成長に追いつけないことも多く、十分なスキルを持った人材採用と現在の従業員が十分なスキルを獲得するためのリスキリングを組み合わせることで事業拡大を成功させています。
それぞれの事業モデルによって必要なスキルは異なるため、リスキリングの領域も事業領域の変化に連動して変えています。
複数の事業を展開する企業はもちろん、単一事業であっても市場の変化や会社の成長によって必要な人材ポートフォリオは変わるので柔軟で迅速な対応が必要です。
若手への成長機会の創出
サイバーエージェントでは、若手への成長機会の創出のためにさまざまな施策が取り組まれています。代表的な例を3つご紹介します。
【次世代抜擢枠】
経営チームの中に次世代抜擢枠を設けて、専務8人のうち2人が次世代抜擢枠になっている。最年少の執行役員は32歳となっており、年齢や経験のダイバーシティーを実現している。
【新卒社長】
子会社や関連会社の社長ポジションに新卒や若手社員を登用する取り組み。すでに20-30代の社長を52名輩出している。
【あした会議】
役員と社員でチームを組んで、新会社設立や人事制度などの重要な決議事項について討議する取り組み。役員と社員のコミュニケーションの場にもなっている。
このような年齢や役職に左右されずに対話できる環境整備や、優秀な人材への重要ポストの用意は、従業員のモチベーション向上に繋がり、会社に良い循環を生み出します。
エンゲージメントサーベイとその活用
エンゲージメントサーベイに取り組む企業は多いですが、サイバーエージェントはサーベイ後の運用も非常に優れています。
サイバーエージェントではリクルート社の提供する「GEPPO」をエンゲージメントサーベイのツールとして活用しています。GEPPOでは、従業員の日々のコンディションやモチベーションの見える化が可能になるツールです。
特に、サイバーエージェントの運用で優れた点は「社内ヘッドハンター」による徹底したケアです。社内ヘッドハンターと呼ばれる専任者をつけてすべての社員のコメントに返信し、社員が発するサインに漏れなく対応しています。
また、社内異動公募制度の「キャリチャレ」とも連動しており、従業員のキャリア志向やモチベーションの源泉を把握することで適材適所の人材配置が可能になります。
エンゲージメントサーベイは情報の把握だけで終わってしまうケースも多いですが、その後の適切なケアや社内異動の情報源にする運用方法において参考になる事例です。
サイバーエージェントの今後は?
統合報告書では、AbemaTVを中心としたメディア事業に力を入れていきたいと語られています。また、藤田氏自ら、「これからの10年をかけて次期社長を育成する」と明言しており、創業社長から2代目社長への引き継ぎを重要課題としております。
サイバーエージェントの若手が挑戦できる環境は、従業員のモチベーションを高めてイノベーション促進の効果も期待できるでしょう。一方で、急激な事業成長や事業の多角化の背景には人的資本経営があり、事業展開に連動した組織づくりが行われています。
創業社長から2代目社長への引き継ぎは、組織において重要な分岐点になります。同じような創業社長からの引き継ぎフェーズの企業はもちろん、人的資本経営に取り組む企業は今後も注目すべき事例です。
人的資本経営・組織開発ならRECOMO
本記事では、サイバーエージェントの取り組む人的資本経営について解説しました。
サイバーエージェントでは、「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」という理念のもと、積極的な事業展開や連動した人材戦略が行われています。
理念から戦略への落とし込みは、現状の組織の分析や課題の可視化など領域が多岐に渡り、自社内だけで解決することが難しい場合も多いです。人的資本経営の伴走者として、株式会社RECOMOが提供するRECOMO Xを検討してみてはいかがでしょうか。
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