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オムロン株式会社は金融庁が2023年1月に公表した「記述情報の開示の好事例集2022」で事例として取り上げられるほど、意欲的に人的資本経営に取り組んでいる企業です。
「記述情報の開示の好事例集2022」は、人的資本の情報開示の義務化にあたって参考になる事例が紹介されています。その中でオムロンは、開示される情報量の多さや具体性が評価されています。
オムロンがこのように評価される背景には、創業期から築き上げてきた企業風土や地道な人的資本経営の取り組みがあります。
本記事では、「記述情報の開示の好事例集2022」と「オムロン統合レポート 2022」で示されたオムロンの人的資本経営の取り組みについてわかりやすく解説します。統合報告書は100ページ以上あるので、ポイントだけおさえたい方は是非参考にして下さい。
オムロンの歴史
オムロン株式会社は、オートメーションのリーディングカンパニーで、創業1933年の歴史ある企業です。工場で使用されるFA機器の製造が中核事業で、オムロンでは自身の事業について「ものづくりのためのものづくり」と表現しています。他にも、我々の身近なところでは体温計や体重計などのヘルスケア機器や信号機やATMのシステムなど様々な製品やサービスを生み出している企業です。
オムロンの歴史を語る上で、創業者の立石一真氏が提唱した「サイニック(SINIC)理論」は欠かせません。オムロンではサイニック理論をベースとして事業戦略が練られています。
サイニック理論とは、“Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution”の頭文字で、科学技術と社会が互いに影響しあっていることを示した理論です。新しい科学や技術が生まれると、社会もそれに伴い変化します。また、社会のニーズは新しい科学技術の開発を促し、科学技術を発展させます。科学技術と社会の相関関係によって、社会がよりよい方向へと成長していくことを示したのがサイニック理論です。
オムロンでは、サイニック理論をもとに社会のニーズを先取りした経営が行われており、社会に寄り沿った事業展開がされてきました。
例えば、創業初期の1945~1974年を「自動化社会」と定義し、世界初の無人駅システムなどに力を入れています。続く1974~2005年は「情報化社会」で、顔画像センシング技術やヘルスケア事業に、2005年以降は「最適化社会」でオートメーション事業に注力しています。
このような社会に寄り添った商品やサービスを提供し続けることで、オムロンは国内外の様々な製品のシェアを獲得するグローバル企業へと成長しています。
オムロンの理念
ミッション(社憲)
「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」
バリュー(大切にする価値観)
「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」
前述したサイニック理論はミッションやバリューの「ソーシャルニーズの創造」という形で現在のオムロンにも企業文化として深く根付いています。統合報告書では、現代表取締役社長/CEOの山田義仁氏は「ソーシャルニーズ創造に向けてギアチェンジしていく」と本気度を示しており、現代表取締役執行役員専務CTOの宮田喜一郎氏も、研究や開発自体が目的化しないために、企業の原点であるソーシャルニーズの創造に立ち戻る必要性があると語っています。
「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」では次の章で詳しく説明する「人的資本経営の取り組み」と深く連動しています。オムロンでは、従業員がチャレンジしやすい環境づくりやダイバーシティ&インクルージョンを始めとした人間性の尊重のための取り組みが数多く行われています。
参考になる人的資本経営のポイント
ここからは、具体的にオムロンではどのような人的資本経営の施策が取られているのかを解説します。特に、人的資本の情報開示に取り組みたい企業や人的資本経営の具体的な施策への落とし込みに悩んでいる方には参考になる事例です。
今回は3つの人的資本経営のポイントに絞って解説します。
人財戦略ビジョンの策定
オムロンの事例でまず参考になるのは、人的資本経営の方向性や本気度を明示している点です。オムロンでは、ミッション実現のためにグループの長期ビジョン「Shaping the Future 2030(SF2030)」を策定しています。その中では「人財戦略ビジョン」が掲げられています。
SF2030人財戦略ビジョン
「会社と社員が、“よりよい社会をつくる”という企業理念に共鳴し、
常に選び合い、ともに成長し続ける」
また、SF2030の1stステージとされている2022~2024年度では、従来(2019~2021年度)比の3倍となる累計60億円を人材開発に投資することが発表され話題になりました。
このようにオムロンでは、人的資本経営に積極的に取り組むだけでなく、その方向性を上手く発信することで社内外のステークホルダーを巻き込んだ人的資本経営を実現しています。
非財務指標の多さ/明確さ
金融庁の「記述情報の開示の好事例集2022」でも評価されている点ですが、オムロンは情報開示の項目の多さや明確さに秀でている事例です。
前述の「人財戦略ビジョン」の達成のためには「ダイバーシティ&インクルージョンの加速」が不可欠とされています。
オムロンでは、ダイバーシティ&インクルージョンの加速に対して、以下のような施策と成果指標を掲げています。
人的資本経営の施策 | 成果指標 |
グローバル重要ポジションの現地化推進 | 80%以上 |
次世代リーダーの育成による女性活躍の推進 | グローバル女性管理職比率18%以上 |
キャリア・雇用形態・働き方の多様な選択肢の拡充 | VOICE SEI 70P以上 |
成長と挑戦を後押しする”応援文化”の醸成 | VOICE&360°フィードバック該当スコア |
※VOICEはオムロンが行う独自のエンゲージメントサーベイ
※SEIは”Sustainable Engagement Index”の略称で「持続可能なエンゲージメント指標」
他にも様々な施策があり、それに対する成果指標がそれぞれ設定されています。企業理念が人財戦略に落とし込まれるとともに、非財務指標としてその成果指標も具体的に、かつ、明確化されている点がオムロンの人的資本経営の特徴です。
チャレンジを後押しする取り組み(TOGA)
オムロンのようにチャレンジし続ける風土を醸成したいと考える企業は多いのではないでしょうか。オムロンでは、TOGA(The OMRON Global Awards)というグローバル全社員が参加する企業理念実践のためのチャレンジを評価する制度が存在します。
この取り組みは、ナレッジマネジメントのフレームワークであるSECIモデルで設計されており、宣言する→実行する→振り返り共有する→共鳴する、というサイクルで年間を通じて取り組みます。5月10日の創業記念日に予選を勝ち抜いたチームが全社で発表/評価される仕組みです。
このように積極的にチャレンジした内容を会社全体で共有することで、評価された人のモチベーションだけでなく、周りの人にも挑戦する勇気を与える「共感と共鳴の輪」が生まれています。
SECIモデルについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照下さい。
「ワイズカンパニーとは?失敗しないナレッジマネジメントのポイントやフレームワークを紹介」
オムロンの今後は?
冒頭で示した通り、2005年からはオートメーション事業に注力しています。オムロンが目指すオートメーションの形は「人が活きるオートメーション」です。
人が活きるオートメーションとは、「代替」「協働」「融和」の3つのオートメーションが最適に組み合わさることで人の能力が最大限に発揮されることを示しています。
機械が人の作業を担う「代替」はすでに一般化していますが、人と機械が支え合って作業する「協働」や機械が人の可能性や人間らしさを引き出す「融和」の実現がオムロンの今後の重要課題でしょう。
オムロンは情報開示の面だけでなく、理念から1つ1つの施策までの落とし込みが丁寧に行われています。人的資本経営に取り組む企業は今後も注目すべき事例です。
人的資本経営・組織開発ならRECOMO
本記事では、オムロンの取り組む人的資本経営について解説しました。
オムロンは「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」の理念のもと、積極的な事業展開や連動した人財戦略が行われています。
理念から戦略への落とし込みは、現状の組織の分析や課題の可視化など領域が多岐に渡り、自社内だけで解決することが難しい場合も多いです。人的資本経営の伴走者として、株式会社RECOMOが提供するRECOMO Xを検討してみてはいかがでしょうか。
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