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日々多くの経営者と対話する中で、「自律的に動く組織をつくりたい」と相談を受けることが多々あります。
「自律型組織」と検索すれば、その方法論や手法の情報が簡単に得られる時代。その中でも、日本で2018年ごろから注目されているのが「ティール組織」です。「うちの会社もティール組織にしたい」と考え、行動を起こした経営者も多くいます。
そんな会社の中ではどのようなことが起きたのでしょうか。
弊社の過去のコラム「ティール組織とは?超自律型の次世代型組織をわかりやすく解説!」にてティール組織について解説していますが、本記事では、より具体的な事例に基づき、その落とし穴や経営者がやるべき組織作りについて解説します。
ティール組織への憧れと現状の組織に対する不満が引き起こす混沌(カオス)
ティール組織に憧れる社長の奮闘と従業員の反応
よくありがちな社長像としては、現状の組織に不満、そしてこのままでは会社が成長しないという焦りを抱いており、何かを変えなくてはいけないと日々考えています。組織について問うと、きっとこんな回答が返ってくるでしょう。
「うちの組織は、自律的に動かない従業員ばかり。自分たちで考えて行動して欲しいけれど、私が指示しないと上手くいかないので、中々安心して任せることが出来ない。どうしたら良いのか。」
そんな時、ティール組織という考え方を知る機会があり、「うちの組織もこれを導入すれば良い組織になりそうだ!」と思い立った社長。人事に指示を出し、ティール組織に必要と言われる3つの要素を取り入れてみることにしました。
・セルフマネジメント:クラウド上で人事評価や給与基準など、できる限りの情報を社内に公開した。
・ホールネス(全体性)=自分らしく働ける環境づくりのために、オフィスにカフェ(談話)スペースを設けた。
・エボリューショナリーパーパス=それらしいパーパスを作り、従業員の目に触れるようにポスターをオフィスの壁に貼った。
色々と行動してみたものの、従業員たちの反応はイマイチでした。「これで大丈夫」と思っていた社長の思惑は外れ、しらけているようにさえ感じられます。ある従業員に今回の施策についてコメントを貰うと、こんな声が。
「僕たちが何を求めているのか、社長は全然分かっていないことが今回のことではっきりしたと思います」
一番怖いことは「沈黙した組織」になること
意外に思われるかもしれませんが、「自分たちは何者で、何をやっていて、どうありたいんですか?」という問いに、答えられない経営者が一定います。今回のケースでは自分の会社をティール組織という型にはめることが目的になってしまっており、自分たちはどうありたいのか、という本質的な目的が失われています。
こういう場合に一番怖いことは、従業員が会社や経営層に不満を感じているものの、それを経営陣にぶつけるパワーすら無くなり、無気力・無関心の状態になっていくことです。
最終的に多くの従業員が沈黙したまま退職していきます。退職理由で本当の理由を言わない人が多い組織は、経営層が課題の本質に気付くことが出来ず、気付いた時には組織崩壊が目前まで迫っているということもあります。
大事なことは型にはめることではなく、もっと深い本質の部分である、ということ。
場合によっては見たくない現実を見ないといけない。これまで避けてきたことと向き合わなくてはいけない。そこから逃げているうちは、従業員は本気になりませんし、組織としての力を最大限発揮出来ることは無いでしょう。
続いて、自律型組織と階層型組織のメリット・デメリットを考察してみます。
自律型組織と階層型組織、どちらが企業成長をもたらすのか
会社の状況によって合う組織の型は異なる
まず、前提の確認ですが、自律型組織と階層型組織は一般的に以下のように説明されます。
自律型組織:権力が組織の一部に集中せず分散され、従業員が自律的に判断・行動する組織形態
階層型組織:権力が組織のトップに集中し、階層によって権利や裁量が異なる組織形態
それらの違いとして、具体的には下記のような要素が挙げられます。
・ヒエラルキーの有無
・役職の有無
・従業員それぞれの裁量権/権力の大きさ
・リーダーの有無
・人事の有無
例えば、営業組織を例に考えてみましょう。
数値管理・KPI管理をきっちり行うことで売上を最大化したい場合には、ヒエラルキーがある階層型組織が合うでしょう。
一方、「営業もクリエイティブ職だ」と捉え、細かな数値管理よりも個性を活かすことを重視したい場合は、従業員一人一人の裁量が大きい自律型組織の方が合いそうです。
このように、同じ営業組織でも会社の状況や考え方、マネジメントする人物の特性などによって、合う組織の型は異なるのです。
変数は会社の成長フェーズである
前述のように一度選択した組織の型でも、ずっとそのままであればいいということではありません。重要なポイントは、会社に合う組織の型は「会社のフェーズ」と共に変化していくということです。
【創業期】
サービス開発・サービス提供・営業に至るまで、多くの仕組みが整っていない状態。従業員は役割や役職に囚われない動き方が求められ、既存のルールが日々変わっていく変化の激しい環境です。こうした環境では、自律型組織の方が合うでしょう。
【拡大・成長期】
サービス開発・サービス提供・営業に仕組みがあり、それを基に企業活動を拡大していく段階。人材育成のために権限移譲が求められたり、明確な評価基準が必要になったりします。こういった環境では階層型組織の方が合うでしょう。
このようにどのような組織の型が合うかは、会社の成長フェーズを中心に、関わる人、サービス開発の内容などによって変わっていくものです。経営者は今の会社にはどのような組織の型が良いのかを見極めなくてはいけません。
会社の変化を見極めるには
このような場合にも、理念から丁寧に組織づくりをする姿勢が大事になります。会社の10年後のありたい姿から5年後、3年後、1年後、そして現在と逆算で考えてみると、未来のありたい姿と現在とのギャップが見えてきます。会社の現在地が今どこにあるのかを知ることで、今後組織をどのように風に変化させて行けば良いのかがはっきりしてくるでしょう。
最後に、誰もが知る偉大な企業の「失敗」を紹介します。
グーグルが創業からわずか3年ほどの頃、既に従業員は数百名の規模になっていましたが、当時の管理職の働きに不満を持ったある幹部の発言をきっかけに、組織のフラット化計画が実行に移されました。
そんなとき、1兆ドルコーチとして有名なビル・キャンベル氏がやってきて、職場の様子を観察し、「ここには管理職を置かないとダメだ」と提言をしました。グーグル創業者のラリー・ペイジ氏はフラットな組織体制に満足していたため議論に発展しましたが、最終的にエンジニア数名に直接「管理職が欲しいか」と尋ねたところ、次のことを理由に、イエスと答えたそうです。「何かを学ばせてくれる人や、議論に決着をつけてくれる人が必要だから」
結局、グーグルは翌年になって管理職をもとに戻すことになりました。
(引用:「上司はムダな存在でしかない」と思っていたが…管理職を全廃したグーグルがたった1年で元に戻した理由」)
もしこのときラリー・ペイジ氏が従業員の声を聞かずフラットな組織であることに固執していたら、現場の不満・不調和に気付けず、大量離職を招いていたかもしれませんね。
では、会社の成長に合わせて組織の型を変えていく必要性に気付いた経営者が、流行りの組織論に惑わされず、向き合うべきことは何なのでしょうか。
”流行りの組織論 ”から脱し、経営者が考えるべき組織の未来とは
未来を描くために、経営者の過去をひも解く
未来の組織を描くためには、まず会社のありたい姿について考える必要があります。
そして、ありたい姿を考えるにあたり経営者は
「自分たちは何者か」
「どこに向かっていくのか」
「どうありたいのか」
を明確にすることがとても重要です。
会社の未来を考えるとき、数年後のことを自分一人でただ想像するだけでは、なかなか発想が広がらずうまくいきません。それは、経営者の思想・世界観が、経営者の過去体験から生み出されているからです。経営者がこれまで積み重ねてきた価値観が、そのまま経営の思想・世界観に反映されています。
そのため「自分たちは何者か」を考える際、弊社では経営者の過去体験を6歳頃まで遡って深掘りしています。過去に感じた想いや学んだことが経営の思想・世界観に繋がっていくためです。
目指すべきはありたい姿を実現する組織
こうして描いた会社のありたい姿を実現するための体制が、理想的な未来の組織です。
具体的には、会社のありたい姿と現状のギャップを埋めるために経営戦略を策定し、その経営戦略が事業戦略・人事組織戦略と連動しあっている状態です。
人的資本経営・組織開発ならRECOMO
このような視点で進めれば最終的に強い組織が出来るということは、弊社が対話してきた多くの経営者が理解し納得してくれます。
ただ、そこは言うは易く行うは難しで、経営者や経営チームだけで成し遂げることは簡単ではありません。
株式会社RECOMOは理念から丁寧に組織開発を伴走することで事業の成長を後押しする会社です。「人の可能性・価値を最大に広げる社会を創る」をミッションとして掲げ、事業を伸ばすために、現状の組織の分析から戦略策定、自走化まで組織開発の取り組みを支援するサービスがRECOMO Xです。
具体的には、以下のようなサービスを提供しています。
・経営者が取り組む本質的な課題の可視化
・ビジョン実現のための人材組織戦略策定と実行支援体制構築の支援
・責任者人材の育成/自走化支援
会社のありたい姿を考える機会が欲しい、経営戦略が事業戦略・人事組織戦略と連動している状態を実現したい、とお考えの経営者の方は、ぜひお気軽に以下の無料相談からご連絡ください。