人的資本経営への取り組みは本当に必要?その必然性と始め方を解説!

目次

近年、「人的資本経営」が注目されるようになり、すでに会社として取り組みを始めている企業も増えてきたように感じます。

しかし、このキーワードばかりに気を取られ、本質的な意味や目的を捉えずにすぐに施策に取り組んでしまい苦をしているお話や、漠然とその必要性を感じているものの、なぜ必要なのか、具体的には何をすれば良いのかが分からない、といったご相談も増えてきました。また、一方では「大手企業が取り組む課題であって、自社の規模やフェーズでは取り組む必要はないのでは」という声も聞きます。本当に大手企業や上場企業に限った考え方なのでしょうか。

以前弊社のコラムでも「人的資本経営とは?企業が取り組む必要性と準備について解説!」という記事にて、経済産業省が公表した内容を元に解説していますが、今回はRECOMOなりの視点・解釈も添えてその必要性や始め方について解説します。

歴史と社会の変化から紐解く、人的資本経営の必要性

なぜ今「人的資本経営」なのか

まずは、なぜ今「人的資本経営」が注目をされているのか、歴史を振り返りながら改めて考えてみたいと思います。キーワードは「原点に立ち戻る」です。

・1980〜2000年代
この時代、企業はとにかく事業を成長させることに注力していました。経営の主軸は事業。言い換えれば経営において「モノ」が最重要と捉えられていました。

・2000年~2010年
次いで、IT・技術革新の波が一気に押し寄せます。「情報」をどう活用するかが大きな経営課題となった時代です。

・2010年~2020年
日本でもVCやファンドが台頭し、多くのスタートアップ企業が金融の力で拡大・成長しました。別の言い方をすれば、資金調達が圧倒的に多かった時代ですね。その中には「カネ」の力で本来の企業価値以上のみせかけの価値を作り出していた企業もありました。

ここまで見てきた通り、これまで40〜50年の間、経営資源の根幹となる「ヒト・モノ・カネ・情報」の中で、ヒト以外のモノ・カネ・情報が経営の中心になる変遷がありました。この流れの中で、企業を構成するとても重要な要素であり、「モノ・カネ・情報」を創り出している「ヒト」の存在が忘れられてきました。企業はヒト以外のもので付加価値を出そうとしてきましたが、時代が一回りし、全てのことはヒトが生み出していると気づき始めました。

「人的資本経営」はトレンドではなく、必然

人口の動きにも注目してみましょう。現在世界人口は増え続けていますが、2060年をピークに減少に転じると予測されています。そして日本はその先駆けとして、既に人口減少の少子高齢化社会となっています。そしてそれは今後も加速していくでしょう。
これからの社会はまさに War for Talent、数少ない優秀なタレント人材の採り合いがグローバル単位で始まります。

多くの企業はなぜ今までヒトを大事に思えなかったのか?答えはシンプルで、求人を出せば比較的簡単に人が採用できた時代が長く続いたからです。物理的に労働人口が減り採用できなくなれば、今いる一人一人の人材を大切にしようと考えるのは当然ですよね。

これらの背景から、今「人的資本経営」が注目されることは必然であると考えます。「トレンドの人的資本経営」というような記事を見かけることがありますが、この変化は単なるトレンドでは無く、不可逆的なものであると捉えるべきです。そして、今後社会に必要とされるサービスや企業活動を提供していこうとするならば、中小企業やスタートアップなど今現在で開示が求められていない企業も人的資本経営に取り組む必要があるのです。

ではこれからの時代を生き残っていくために、企業は「人的資本経営」をどのように捉えて、どんな風に取り組んでいったらいいのか。

次に、経営視点・現場視点で人的資本経営実践のための具体的な戦略を考えていきます。

人的資本経営の始め方 ~必ず押さえるべき6つのチェックポイント~

人的資本経営を実践している会社とは

1980年以降の社会情勢を振り返りながら、「人的資本経営」は単なるトレンドでは無く、不可逆的なテーマであることをお伝えしました。

では実際に人的資本経営を実践している会社にはどのような共通する特徴があるのでしょうか。
これまで500人以上の経営者と対話してきた中で、成長中でこれからも伸びていく会社と、今後の成長は見込めない会社にはいくつかの違いがあることが見えてきました。

今回はその違いをチェックポイントという形で公開します。これらのチェックポイントを全てクリアできている会社は伸びていきます。一つだけ欠けているという場合でも注意が必要です。ぜひ自社が実践できているかどうかをチェックしてみてください。

人的資本経営の6つのチェックポイント

人的資本経営では「経営戦略と人材戦略の連動」が推奨されていますが、それらの戦略を描くために、前提として【会社の将来ありたい姿】を明確に描くことが最も重要です。

【会社の将来のありたい姿を描くためのチェックポイント】

①現状の課題がなぜ発生しているのかを深堀する
まずは頭に「自社の経営課題」を思い浮かべてください。そこから課題の原因分析を、なぜ?の問いを最低でも5回繰り返し深堀りします。最初に思い浮かぶ課題は表面的なレベルのものが多いので、深堀りすることで本質的な課題が見えてきます。

②過去体験の深堀り
経営者がこれまでの人生で起きた事象をどう判断し、行動し、どういう結果になったのかを深堀りします。どの過去体験が今の時点での経営者としての経営哲学・価値観・世界観に影響しているのかを把握します。

③経営の視野・視座・視点を広げる
3年後・5年後・10年後の事業・組織・文化のありたい姿・状態を創造します。そして3年後・5年後・10年後の状態を実現するために必要な組織体制を「未来組織図」として作ります(具体的な項目:売上・業績/人数規模/事業内容/経営体制/組織/文化/その他)。

これら3つの項目をクリアすることで【会社の将来ありたい姿】が確定します。

ここから具体的な人事戦略に入っていきます。

④経営戦略を実現するための人材要件を定義する
未来組織図が決まるとすぐに採用に走ってしまいがちですが、その前に経営戦略から事業戦略、人事戦略をブレイクダウンした上で、必要な人材要件の定義をきちんと行うことがとても重要です。

⑤中長期の視点を持ち、社内の人材で配置・育成を戦略的に進める

⑥採用活動を行う

④⑤⑥の項目を考える上で最も大切なことは、「誰が人事戦略のイニシアティブを取るか?」です。

これまで多くの会社が人事のことだから、と人事戦略を人事部任せにしてきました。しかしこれからは「経営戦略と人材戦略の連動」のために、人事戦略についても5人のCXO(CEO/CSO/CHRO/CFO/COO)がイニシアティブを取り、取締役会がそのモニタリングをしていく、という体制が望まれます。

続いて、人事戦略(④⑤⑥)の細かいポイントなどについて掘り下げてみたいと思います。

人的資本経営の始め方 ~経営戦略を実現するための人事戦略とは~

人事戦略の企画・実行時の考慮すべきポイント

ここからは具体的な人事戦略の実行について、ポイントを解説していきます。

④経営戦略を実現するための人材要件を定義する
まず前提として、【会社の将来ありたい姿】を因数分解して考える必要があります。

このときのポイントは、どういった要素があれば会社のありたい姿が実現できるのか?という形で、帰納法で因数分解していくことです。一般的な採用市場にあてはめたり、他社との比較で考えたりするのではなく、あくまで常に「自分たちのありたい姿」を念頭に置いて考えてみてください。

求める人材像を考えるポイントの一例としては、下記のようなポイントがあります。
・(経営戦略を実現するために求められる)技術/知識
・(経営戦略を実現するために求められる)基本の姿勢
・(経営戦略を実現するために求められる)経験値
・(経営戦略を実現するために増強すべき)人材像

⑤中長期の視点を持ち、社内の人材で配置・育成を戦略的に進める
求める人物像が決まったら、すぐに採用活動に走ってしまいがちですが、これはよくある間違いです。一番最初に考えるべきことは「社内人材を配置・育成出来ないか?」です。

社内の人間を配置・育成した方が良い最大の理由は、会社の理念に対する共感・共鳴の割合が大きいことです。

これまで見てきた経験上、人材採用について明確になっていることがあります。会社の経営戦略を実現するために必要な人材は、お金(給与の高さ)だけでは確保できません。経営戦略を実現するために必要な人材像の要件を満たした上で、理念への深い共感・共鳴が必須であるからです。

配置・育成のポイントは【戦略的配置転換】です。一方的な会社都合ではなく、会社のパーパスと個人のパーパスの重なり合いを大切にすることです。つまり、会社にとって最適であり、更に本人が一番モチベーションが上がりパフォーマンスが発揮できるところを見つけ出します。ここは経営の腕の見せどころと言えますね。

⑥採用活動を行う
採用活動の手法は世の中に溢れていますが、ここでは「経営戦略を実現するため」に重要なポイントをお伝えしていきます。

いきなり「こういう人を募集しています!」と打ち出すだけでは、人は採用できない時代です。まず「自分たちは何者か?」を伝えること、すなわち自分たちの理念の話から始めることが大切です。
その上で、
・会社にとってヒト(社員)とはどういう存在なのか?
・社員にとって会社はどういう存在なのか?

この2つの問いの重なり合う部分をより大きくするために取り組んでいることを、積極的に社外に発信していきます。

また、選考で何を知りたいのかを予め公開するのも良いでしょう。候補者に「面談や面接ではこういう観点で話をしたいのでこういう質問をします」と伝えておくことです。

人的資本経営・組織開発ならRECOMO

ここまでみてきたように、人的資本経営の肝は「経営戦略を実現するための人事戦略」です。そして、その推進には人事だけでなく経営層がイニシアティブを取り、取締役会がそのモニタリングをしていく体制づくりが重要です。

一方で、要となる経営陣やキーパーソンが不在のため、その体制がつくれないケースや、自社だけで戦略策定や組織開発を遂行することに不安を感じたり、行き詰っている方もいるのではないでしょうか。

そのような方は、まずは株式会社RECOMOの無料相談がおすすめです。

株式会社RECOMOは理念から丁寧に組織開発を伴走することで事業の成長を後押しする会社です。「人の可能性・価値を最大に広げる社会を創る」をミッションとして掲げ、事業を伸ばすために、現状の組織の分析から戦略策定、自走化まで組織開発の取り組みを支援するサービスがRECOMO Xです。

具体的には、以下のようなサービスを提供しています。
・経営者が取り組む本質的な課題の可視化
・ビジョン実現のための人材組織戦略策定と実行支援体制構築の支援
・責任者人材の育成/自走化支援

人的資本経営の領域は多岐に渡ります。外部のパートナーも上手く使いながら、成果に繋がる人的資本経営を目指しましょう。

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