心理学的経営とは?個性を追求し経営に生かす手法をご紹介!

目次

「心理学的経営」についてご存知でしょうか?心理学的経営とは、リクルート社の創業メンバーである大沢武志氏が提唱した経営論です。

リクルート社は人材開発、組織開発に特化したグループ会社を持ち、適性検査の「SPI」や組織開発の「ROD」などの商品を開発しています。また、社内から多くの経営者を生み出す「人材輩出企業」としても有名です。

「なぜ、リクルートの社員はあんなに元気なのか?」「リクルートではどのような組織開発をしているのか?」と興味を持たれている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、大沢武志氏の著書『心理学的経営』で語られたリクルート社が創業当時から大切にしている組織開発の考え方や手法についてご紹介します。

心理学的経営とは?

まずは、心理学的経営とは何かについて、リクルート社の歴史や心理学的経営を実践することでのメリットなどを踏まえて解説します。

概要

心理学的経営は、1993年に大沢武志氏の著書『心理学的経営ー個をあるがままに生かす』によって提唱された経営論です。

副題にもあるように「個をあるがままに生かす」ことが重要視されており、人間の「感情」や「個性」を深く追求し、経営に生かすための手法が示されています

リクルート社では、個を大切にする文化が創業当時からあり、「社員皆経営者主義」とも表現されるほど、個人に対して裁量権が与えられ、一人ひとりが自律して行動しています。

このような組織体制では、組織内の風通しがよく、従業員もやりがいを持って業務に取り組めます。一方で、運用の仕方によっては生産性が落ちるなどのデメリットもあります。心理学的経営は「ティール組織」と近い組織形態と言えるでしょう。

ティール組織についてはこちらの記事を参照
ティール組織とは?超自律型の次世代型組織をわかりやすく解説!

リクルート社の歴史

1960年にリクルート社は創業され、『心理学的経営』が出版された1993年にはすでに「SUUMO」「カーセンサー」「じゃらん」などを手掛けています。

創業者である江副浩正氏は有名ですが、大沢武志氏は組織人事担当の専務取締役として創業からリクルート社を30年間支えました。創業当時から「学歴・男女・国籍不問」の採用基準を掲げ、様々なバックグラウンドを持つ人材が、多様な個性を発揮することで成長を加速させています

リクルート社は自社で採用している組織開発の手法をグループ会社であるリクルートマネジメントソリューションズにて商品として提供しています。特に、適性検査のSPIや組織開発のROD(360度評価など)は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

ただし、これらの商品は組織開発の手段に過ぎず、目的を明確化し、目的達成の手段として取り扱うことが重要です。特に、SPIは単なる採用の足切り基準として活用している企業も多いので注意が必要です。心理学的経営を理解することで、効果的にSPIやRODを導入していきましょう。

心理学的経営のメリットとは?

心理学的経営の考え方を自社の組織開発に取り入れることで以下のようなメリットが期待できます。

・自主的に成長し続ける人材を育成できる
・イノベーションが促進される

心理学的経営では「自由裁量」と「自己責任」が徹底されているため、従業員のモチベーションが高く保たれます。従業員自身が成長や目的達成のために学習するようになり、当事者意識を持って主体的に行動するようになるので新しいアイデアも生まれやすいです。

心理学的経営を構成する要素

心理学的経営は以下の6つの要素から構成されています。

・動機づけ
・自律したチーム
・組織の活性化
・リーダーシップ
・適性
・個性化

それぞれの要素について、必要性や実践のためのポイントを解説します。

動機づけ

要素の1つ目は、動機づけです。動機づけとは、自ら行動を起こし、それを持続させる機能や過程のことです。モチベーションとも言い換えられます。

リクルート社では「自分はできる・自分で決める・認められている」と思える環境を作り、従業員への動機づけを行っています。動機づけを行うことで、仕事に対する意欲が高まり、生産性の向上に繋がります。

動機づけに取り組む際には、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」のそれぞれの視点を持つことが必要です。

外発的動機づけとは、自分以外の人間によって人為的に動機づけを試みる方法です。例えば、報酬を上げたり、役職を与えたりなどがあります。外発的動機づけは即効性があるものの、短期的な動機づけになってしまうことが多いです。

内発的動機づけとは、自分自身から湧き上がる興味や関心に火をつけて動機づけを試みる方法です。内発的動機づけは、当事者本人の中に答えがあるため、自己分析の場を設けたり、個人の適性に合わせた業務を配分したりなどで高められます。内発的動機づけは長期的な目線は必要になりますが、持続的な動機づけになりやすいです。

外発的動機づけと内発的動機づけの両方の視点を持って、動機づけに取り組みましょう。

自律したチーム

チーム単位で自律していることも心理学的経営の重要な要素です。

自律と自立の違いはご存知でしょうか。まず、「自律」とは価値観や理念などに従い、外部からの影響を受けずに独り立ちすることを指します。一方で「自立」とはお金や生活において、他者に依存せず行動することです。自立は外面的な要素であるのに対し、自律は内面的な要素になります。

ここで示した自律したチームとは「チーム単位で自主的な行動や意思決定がされる状態」を指します。自律したチームを育成することで、目標達成のための意見交換や助け合いが生まれやすくなるメリットがあります。

自律したチームを作るには下記の要素が必要であると『心理学的経営』では示されています。

・所属が明確であること
・お互いの個性がわかる人数であること
・意思決定が邪魔されないこと

業務を行う上で一人が複数のチームやプロジェクトに属することはよくあることですが、心理学的経営では、一人につき1つのチームに絞ることによって帰属意識が生まれると言われています。また、5~7人のお互いの個性がわかる人数であることや上層部が意思決定を邪魔しないことなども自律したチームを育成するには重要です。

組織の活性化

組織の活性化とは、「カオス」の状態を演出することで「自己革新」をする組織のことであると『心理学的経営』では示されています

カオスとは、無秩序で混沌な状態のことを指します。自己革新とは、ありたい姿と現状のギャップを認識し、その差を埋めるために自ら行動することです。

大沢武志氏はカオスの状態を演出するための取り組みとして「一に採用、二に人事異動、三に教育、四に小集団活動、五にイベント」を掲げています。一に採用、二に人事異動とあるように新しい人をチームに入れたり、チームを移動させることで安定した状態を作らない=カオスの状態を作ることが可能です。

カオスの状態を経験することで、一人ひとりの自律的な行動が促され、自己革新へと繋がっていきます。著書では、組織の活性化には下記のサイクルが存在すると示されています。

秩序→自己否定→無秩序→自己組織化→秩序

カオスの演出によって、既存の体制や暗黙のルールに疑問を持ったり、現状の厳しい批判によって秩序に揺さぶりをかけることで、新しい秩序を作るための自己組織化が進みます。

秩序のある状態は居心地の良い状態ですが、このサイクルを回すことで組織が活性化し、「自己革新」をする組織が実現可能です。

リーダーシップ

心理学的経営の要素には、リーダーシップを持ったリーダーの存在が必要不可欠です。

マネジメントとリーダーシップの違いはご存知でしょうか。「マネジメント」とは、目標達成のための手段を定めて、それを管理することです。一方で「リーダーシップ」とは、ビジョンを明確にしてチームを目標達成に導くことです。リーダーシップは組織をまとめて導く影響力が必要になります。

管理職に適した人材には特徴があるとされており、リクルート社では管理職に適した人材かどうかを適性検査するNMAT(エヌマット)というサービスもあります。具体的には、社交的で集団の中でも自分の意見を言えるタイプや思い切った決断をするタイプなどの項目により適性を検査するツールです。

一方で、大沢武志氏は適性がない人でも「行動」することでリーダーシップを伸ばすことができると『心理学的経営』でも示しています。具体的には下記の4つの項目に従った行動が必要です。

・要望性:従業員に期待し、高い目標を与える
・共感性:従業員を思いやる
・通意性:業務遂行に必要な情報が伝わる環境をつくる
・信頼性:能力的にも人間的にも信頼される

これら4つの要素に従った行動を取ることでリーダーシップが発揮されます。しかし、リーダーがこれらを意識していたとしても、従業員(受け手)にとっては違う感じ方をされることがしばしば生じます。そこで『心理学的経営』のなかでも紹介されている方法は行動サーベイ(360度評価)です。4つのそれぞれの項目に対して周りの人はどう感じているのかを評価します。

これまでは、上司が部下を評価するのが当たり前でしたが、このように部下が上司を評価することは上司の成長にも繋がります。特にリーダーシップの能力は、周りの人の意見を聞きながら育てていく必要があるでしょう

適性

適性を正しく見極めて配置することで、業務の効率化や従業員の働きやすい環境づくりに繋がります

適正と適性の違いをご存知でしょうか。「適正」とは、ある基準に対して正しく適していることです。一方で「適性」とは、人の性格や性質がある分野に適しているかを言います。ビジネスにおける適性には、能力に関する適性と性格の適性があります。

リクルート社がこれらの適性を見極めるために作った商品が「SPI」です。多くの企業では、入社希望者の足切りのために使われることが多いですが、SPIの本来の用途は個人の能力と性格の適性を把握することで、適切な人材マネジメントを可能にすることです

適性検査は、単に仕事ができるかを判断するだけでなく、どこに配置すれば周りの人とうまくやれそうかやその人が自分らしくいられるかなどを検討する材料にもなります。

ただし、適性検査はあくまでも意思決定の材料に過ぎません。意思決定の際には総合的な判断が必要になります。

個性化

心理学的経営の最後の要素は個性化です。『心理学的経営』では、個性化とは全ての「個性」を積極的に認め、尊重することであると示されています

組織が積極的に従業員の個性を認めてあげることで、従業員の「自己開示」と「自己受容」が促進されます。このような組織では、心理的安全性が保たれるため、積極的に自分の考えや気持ちを発信できるようになり、イノベーションも促進されます。

個性においても、すぐに理解するのは難しいのでツールを使うのがおすすめです。『心理学的経営』ではMBTIというパーソナリティ・テストが紹介されています。MBTIでは、外向的か内向的か、感覚型か直感型かなどを測れます。まずは、無料で使えるパーソナリティ・テストを使ってみても良いでしょう。

心理学的経営はこれら6つの要素から成り立っており、これらを満たすことで従業員が自主的に成長し続け、イノベーションも生まれやすいしなやかな組織が実現します。

人的資本経営・組織開発ならRECOMO

本記事では、大沢武志氏の著書『心理学的経営』を読み解き、心理学的経営を構成する要素やリクルート社で取られてきた組織開発の手法について紹介しました。

心理学的経営では、「個性」が大切にされており、個性を把握するための適性検査やときには個性を育成するためにカオスな状態を作り出すなどの手法が示されました。

心理学的経営は、従業員が自主的に行動してくれるなどメリットも多いですが、運用の仕方を誤ると逆効果となる可能性もあります

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