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新入社員の方は「会社での人間関係はうまくいくか」や「会社の中で自分がどのような役割を担えるのか」など不安や葛藤があるのではないでしょうか。
新入社員のうちは覚えることも多く、業務についていくのに手一杯になってしまいがちです。一方で他の人と差がついてしまいやすいのも新入社員の時期と言えます。しかし、スキルアップのために時間を割くのもなかなか大変ですよね。
そこで今回は、組織開発/人材開発の観点で新入社員が押さえておくべきポイントを5つにまとめました。人事の担当者だけでなく、すべての組織に関わる人が知っておくべき社会動向や知識です。新入社員の方は是非参考にしてみて下さい。
新入社員の頃から組織開発/人材開発の意識を持つことの意義
組織開発や人材開発については、なんとなく人事の担当者や管理職の人が考えるべきことと思っている方も多いのではないでしょうか。
組織開発とは、組織に属する個々がベストパフォーマンスを出せるための仕組みづくりです。一方で人材開発とは、教育や訓練によって個人のスキルや知識を高める取り組みです。
新入社員のうちからこれらを意識することで「組織内の自分を客観視すること」や「目標達成のための課題整理」ができるようになるため、成果にも繋がりやすいでしょう。
本記事では、以下の5つの項目に分けて概要や押さえておきたいポイントを詳しく解説します。
- 人材版伊藤レポートから組織開発の潮流を知る
- 人的資本経営の事例から戦略策定プロセスを学ぶ
- ビジョナリーカンパニーから成長組織の法則を学ぶ
- ティール組織で自社の組織フェーズを理解する
- リスキルに目的意識を持って取り組む
人材版伊藤レポートから組織開発の潮流を知る
人材版伊藤レポートとは
人材版伊藤レポートとは、伊藤邦雄氏が座長を務めた経済産業省の報告書です。人材版伊藤レポートには、2020年に公表された「人材版伊藤レポート」と2022年に公表された「人材版伊藤レポート2.0」があります。
人材版伊藤レポートでは、日本の企業が目指すべき組織体制について示され、人材版伊藤レポート2.0では、目指すべき組織体制のためにどのような施策を打つべきかが示されました。
経済産業省が日本企業の収益性改善のために公表しているものなので、多くの企業が組織開発の指針として活用しています。
押さえておきたいポイント
- 経営戦略と人材戦略の連動
- 企業文化の浸透
人材版伊藤レポートにおいて、何度も繰り返し示されたのが「経営戦略と人材戦略の連動」の重要性です。成長期の企業では事業の成長だけが進み、組織の成長が追いつかないケースが多々あります。経営戦略に人材戦略を組み込むことで持続的な競争力が得られます。
また、競争力が高い組織では、企業文化が浸透しているとも示されています。社会・環境にどのようなインパクトをもたらしたいかという「自社の存在意義」に関して社内に重要な思想や考え方があるかどうか確認してみましょう。
新入社員は、経営戦略や人材戦略の策定に直接関わることは少ないかもしれません。しかし、人材版伊藤レポートで示された組織開発の潮流を理解することで自社の経営戦略や人材戦略をより体系的に捉えることができます。
人材版伊藤レポートについて、具体的な内容が知りたい方はこちらの記事をご参照下さい。
「人材版伊藤レポートとは?経営に直結する人材戦略を徹底解説!」
人的資本経営の事例から戦略策定プロセスを学ぶ
人的資本経営とは
人的資本経営とは「人」に焦点を当てた、企業価値向上のための経営の手法です。前述の人材版伊藤レポートでも紹介されました。
経済産業省では、人的資本経営とは何か以下のように示しています。
“人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。”
引用:経済産業省
2023年3月31日以降に事業年度が終了する上場企業には人的資本の情報開示義務が発生します。現時点では各企業によって開示レベルに差があるものの、今後は人的資本経営に取り組む企業が増えてくるでしょう。
企業が人的資本経営に取り組むことで下記のようなメリットがあります。
・経営戦略を円滑に進められる
・組織力の向上により、持続的な企業成長が見込める
・投資家などステークホルダーに成長可能性を示せる
人的資本経営によって、企業は競争優位性を獲得し、持続的な成長を実現できます。
押さえておきたいポイント
- 人的資源から人的資本への移行
- 先進的な企業事例から学ぶ
従来の日本の経営において慣行されてきた経営の考え方に「人的資源」があります。人的資源では人材を「コスト」として捉えてきました。一方で「人的資本」では、人材を「投資先」として捉えています。
先進的な企業事例を押さえておくことも重要です。例えば、キリンホールディングスは人的資本経営の戦略策定において参考になる事例です。現状の女性経営職比率の10%を30%に引き上げるために女性リーダー育成研修の実施を行うなど、明確な数値による目標設定と具体的な戦略を打ち出しています。
このように企業の人材に対する意識は高まっており、持続的な競争力獲得のための組織開発や人材開発が注目されています。他社の成功事例から学ぶ姿勢は新入社員にも重要です。
その他の企業事例について興味がある方はこちらの記事もご参照下さい。
「事例でわかる人的資本経営の本質とは?5社の企業事例を徹底分析!」
ビジョナリーカンパニーから成長組織の法則を学ぶ
ビジョナリーカンパニーとは
ビジョナリーカンパニーとは、1994年に初版が出版されて以来、5年連続でベストセラーとなった、多くのビジネスパーソンのバイブルとなっている本です。
著者のコリンズは「有名な企業がどのように成長し、世代交代を超えて繁栄し続けられるのはなぜか」そこに法則があるのではないかと18社を分析/比較しました。その中にはアメリカン・エキスプレスやソニー、ウォルト・ディズニーなど日本人の我々も馴染みのある企業が選ばれています。
ビジョナリーカンパニーという言葉の意味についてですが、「ビジョナリー」には先見性や未来志向という意味があります。先見性や未来志向のある企業を選定し、その共通項を紹介しているのがビジョナリーカンパニーになります。
押さえておきたいポイント
- 第5水準のリーダーシップ
- 針鼠の概念
第5水準のリーダーシップは最もハイレベルなリーダーシップ像として位置付けられています。第5水準のリーダーシップとは「個人としての謙虚さ」と「職業人としての意思の強さ」を兼ね備えた存在です。結果が悪かったときには、自分に責任があると考え、成功した時にはみんなを称えるようなリーダーが飛躍している企業には共通して存在します。
針鼠の概念とは以下の3つの円が重なる部分を深く理解し、行動すべきという概念です。
・自社が世界一になれる部分
・経済的原動力になる部分
・情熱を持って取り組める部分
何かを考える際は闇雲にアイデアを出すのではなく、このようなフレームを使うことで本質をついた思考が可能になります。
どちらの概念も『ビジョナリーカンパニー2』で示された内容です。他の巻にも新入社員に役立つ知識が示されているので気になる方はこちらの記事をご参照下さい。
「ビジョナリーカンパニーシリーズ全巻を5000字で要約/要点が10分でわかる!」
ティール組織で自社の組織フェーズを理解する
ティール組織とは
ティール組織とは、従業員が企業の目的(パーパス)を正しく理解し、それぞれが目的達成のための意思決定を行う組織です。従業員は上司の指示を待たずとも、自らで考え行動します。ティール組織は「進化型の組織」とも訳され、従業員個人としても組織としても自主的に成長し続ける組織です。
ティール組織に至るまでには、5段階の組織フェーズがあり、レッド→アンバー→オレンジ→グリーン→ティールの順番に成長していきます。フレデリック・ラルーの著書『ティール組織』にて提唱された考え方で、自社の組織フェーズを客観視することが可能です。
押さえておきたいポイント
- 組織フェーズを自社に置き換えてみる
日本の組織では達成型の組織(オレンジ)が多いとされています。達成型の組織は一言で表すと「効率重視の組織」です。達成型の組織では、組織の成果をあげるため、効率化が日々行われ、基本的には数値で管理されます。合理的に成果を上げられる良い面もある一方で、数値に追われて過重労働になってしまったりとデメリットもあります。
達成型の組織(オレンジ)が成長すると多元型の組織(グリーン)になります。多元型の組織は風通しがよく、従業員が主体的に行動する組織です。多元型の組織(グリーン)が成長すると進化型の組織(ティール)になり、階層的構造(ヒエラルキー)が存在しないフラットな組織になります。
進化型の組織(ティール)が最も高次元の組織とされているものの、各組織フェーズにメリットとデメリットが存在します。自社の組織フェーズを把握し、客観的に自分のいる組織を捉えられることで組織の中での自分の役割も見出しやすくなるでしょう。
もっと詳しくティール組織について知りたい方はこちらの記事をご参照下さい。
「ティール組織とは?超自律型の次世代型組織をわかりやすく解説!」
リスキルに目的意識を持って取り組む
リスキルとは
「リスキル」とは、英語のre-skillが語源となっており、日本語訳は「学び直し」です。リスキルはリスキリングとも呼ばれますが、同じ意味で使われます。
例えば、デジタルツールの使い方や語学、マーケティングや課題解決のフレームワークなどがリスキルによって学ばれる対象となります。
特に「デジタル人材」が不足しており、リスキルにより育成する動きが強まっています。デジタル人材とは、最先端のデジタル技術を活用して企業に対して新たな価値提供ができる人材のことをいいます。
リスキルはDX(デジタルトランスフォーメーション)などにおいて企業が必要としているスキルを従業員に学んでもらうことで、企業の成長、個人の成長を促す概念です。
押さえておきたいポイント
- リスキルが取り組まれる経緯/目的を知る
必要性はよくわからないけれど、会社に言われたからセミナーや研修に参加したという経験がある人もいるのではないでしょうか。企業が研修を実施する際には、少なからず費用や時間工数が発生するため、何かしらの目的を持って実施されます。担当者から研修の目的が開示されなかったとしても、自分でリスキルの目的を読み解くことで自社の目指している方向性や必要とされている人材を把握できるでしょう。
研修やセミナーの機会を無駄にしないためにも、目的をしっかりと理解した上で参加できると良いでしょう。
リスキルについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照下さい。
人的資本経営・組織開発ならRECOMO
本記事では、組織開発/人材開発の観点で新入社員が押さえておきたいポイントを5つ紹介しました。
定期的に勉強する時間が取れない方でも、今回ご紹介したポイントを押さえることで、視点と視野が広がり、視座も高まるため効率良く成長できるでしょう。
企業の人材に対する意識は高まってきているため、人事部以外の人でも組織開発や人材開発の視点を持っておく必要性がでています。
株式会社RECOMOでは、組織開発や人材開発の役立つ情報や関連する本の要約などを経営コラムのページで発信しています。難しい内容でも丁寧に解説をつけているため、新入社員の方にもおすすめです。隙間時間などに是非チェックしてみて下さい。