リスキルとは?デジタル時代の人材戦略を徹底解説!

目次

リスキル(リスキリング)は現在多くの企業で導入が進んでいます。リスキルはDXのための施策の1つなので、よくセットで耳にすることも多いでしょう。

ただし、リスキルとはDXのためだけのものではありません。

「新規事業を成長させるために必要な人材が見当たらない」
「人材の定着率が悪く、ノウハウの蓄積や企業文化の醸成・維持が難しい」

自社でこのような悩みがある企業には、今回紹介する「リスキル」の導入をおすすめします。リスキルはこれからの企業の成長に必要不可欠な人材戦略の主軸とも言えるポイントです。

本記事では、リスキルのメリットや導入方法、企業事例をご紹介します。

リスキルとは?

概要

「リスキル」とは、英語のre-skillが語源となっており、日本語訳は「学び直し」です。リスキルはリスキリングとも呼ばれますが、同じ意味で使われます。

経済産業省はリスキルを以下のように定義しています。

“新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること”

引用:経済産業省/リクルートワークス研究所

ここで示されている「必要なスキル」とはそれぞれの企業や個人のレベルによって異なるものです。一例として以下のようなものがリスキルで学ばれます。

・デジタルツールの使い方/ITリテラシー
・プログラミング/AI
・語学、資格
・マーケティングや課題解決のフレームワーク

特に「デジタル人材」が不足しており、リスキルの対象となっています。デジタル人材とは、最先端のデジタル技術を活用して企業に対して新たな価値提供ができる人材のことをいいます。

リスキルはDX(デジタルトランスフォーメーション)などにおいて企業が必要としているスキルを従業員に学んでもらうことで、企業の成長、個人の成長を促す概念です。

背景

リスキルは2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)で「リスキリング革命」が提唱されたことにより、世界的に認知度が高まりました。リスキリング革命では、2030年までに10億人により良い教育、スキル、仕事を提供することが宣言され、各国政府に人材育成に関する政策を実施するように要請しました。

日本では2021年12月に岸田文雄首相から、人への投資を抜本的に強化するため、3年間で4000億円の施策パッケージを実施することが公表されました。

参考:内閣官房内閣広報室

リスキルの必要性は、経済産業省の「人材版伊藤レポート」でも示されています。人的資本経営の実現のための重要な要素としてリスキルが挙げられており、新規の採用活動だけに頼らず、現在の従業員を育てることにも注力すべきであることが示されました。

このように、変化の激しい時代を生き抜くための、人材育成が国内外で重要視されています。

リスキルの必要性を詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照下さい。

人材版伊藤レポートとは?経営に直結する人材戦略を徹底解説

リカレントとの違い

リスキルと似た言葉に「リカレント」があります。リスキルと同様に「学び直し」と訳されますが、違う意味で使われるので違いを理解しておきましょう。

リスキルとリカレントの一番の違いは、学び直しの目的と誰がイニシアチブを取るかです。リスキルは企業の成長のための手段なので、企業が主体となってリスキルの場を提供します。一方、リカレントは個人が好きなことを学び直すことで企業とは関係のないところで行われます。

そのため、リスキルでは働きながら学ぶことが基本となりますが、リカレントでは会社を退職して教育機関で学び直すような場合も多々あります。

リスキルは企業が主体となる取り組みですが、リカレントのような自主的な学びをいかにリスキルに落とし込むかが従業員に納得感をもって取り組んでもらうための鍵となります。

リスキルのメリット

企業の成長のために行われる「リスキル」ですが、具体的に以下のようなメリットがあります。

・イノベーション促進
・企業文化の醸成・維持
・従業員のエンゲージメント向上
・採用コストの削減

イノベーション促進

リスキルによって企業のイノベーションの促進が可能です。イノベーションには「ビジネス」「テクノロジー」「デザイン」の3つの要素が必要とされています。その中でもテクノロジーやデザインは普段の業務の中だけでは身につかない部分が多く、リスキルによって育てていく必要があります。

リスキルによって、従業員が成長し発言できる場を設けることで、自社になかった画期的なイノベーションが生まれるでしょう。

企業文化の醸成・維持

別の企業で経験を積んだ中途社員を積極的に取り入れることで、自社になかった視点を取り入れることが可能です。しかし、前職の企業文化を引きずっていることも多く、自社本来の企業文化を保っていくのが難しくなります。

外部から新しい人材を取り入れるばかりでなく、リスキルを活用して従業員を育てることで現在の企業文化を残したまま企業を成長させることが可能です。

従業員のエンゲージメント向上

リスキルを効果的に活用することで、従業員のエンゲージメント向上が可能です。新たな知識やスキルが身につくことで従業員の自信に繋がります。また、リスキルが浸透することで学ぶ習慣ができ、自主的に動く人材が育ちます。

一方で、リスキルの導入方法を誤るとエンゲージメントの効果がないだけでなく、会社に嫌々やらされるものになってしまいます。後半の章で効果的な導入方法をご紹介します。

採用コストの削減

企業ごとに採用計画書があると思いますが、採用とリスキルのバランスは取れているでしょうか。人材戦略において、採用も重要なポイントの1つですがリスキルを活用することで採用の負担を軽減することが可能です。

例えば、これからの企業の成長のために特定の資格を持った人材が必要になったとします。この場合すぐに採用に動くのではなく、自社の従業員に学んでもらうことで新たに採用するコストを削減できます。

リスキル導入のための3ステップ

リスキルを導入する際には以下の3つのステップを踏むと効果的に導入が可能です。

戦略上重要な人材要件の洗い出し

はじめに、自社の経営戦略から重要な人材要件の洗い出しを行います。必要な人材と現在の従業員のギャップを明確にしましょう。従業員のスキルを把握するには、スキルをデータベース化することがおすすめです。自社で客観的に従業員のスキルを把握するのが難しい場合は外部の企業に依頼することも検討しましょう。他にもスキル管理システムを導入する手もあります。

経営戦略に必要な人材要件と現在のギャップを埋めるのがリスキルです。リスキルの目的を明確にすることで、従業員にも目的意識が根付き効果的に導入が進みます。

教育プログラムを決める

次にリスキルの中身を決めていきます。リスキルの方法には研修、社会人大学、e-ラーニングなどがあります。自社で必要とされる能力を持っている人材がいる場合は、社内研修という形で執り行うことも可能です。

教育プログラムを決める際には、企業が提供しているキャリアアッププログラムを活用するのも1つの手です。Googleでは「Google Career Certificates」という、デジタル人材育成のためのサービスを展開しています。例えば、データアナリスト業務に必要なスキルを身につけるための講義やテスト、実習などの場を提供しています。

他にも様々な教育プログラムがあるので、自社が必要としているリスキルの目的に合致したプログラムを探してみましょう。

導入のための動機付け

最後にリスキルの導入を考えている人事担当者や経営層が注意するべきなのが、従業員への動機づけです。よくありがちなのが、リスキルを導入する側と実際に受ける側で意識のギャップが生じるケースです。

リスキルを導入する上で最も重要なのが動機付けです。リスキルの目的を会社の成長のためだけでなく、従業員の成長やキャリアアップのためという視点で考えるべきです。そうすることで自身の成長のために意欲的にリスキルに取り組んでくれるようになります。

また、業務が忙しい中で、新しいことを学ばなくてはいけないとなると、従業員への負荷が大きくなってしまいます。リスキルはできる限り、就業時間内で行うべきでしょう。

このようなリスキルの目的のすり合わせには1on1でのキャリア面談がおすすめです。従業員それぞれのキャリア観を大切にしつつ、キャリア観が明確でない従業員に対しては今後の社会で生き抜くためには「価値を生み続ける」人材である必要があり、リスキルを通じてそれらを達成できることを丁寧に説明して理解してもらいましょう。

リスキルの企業事例

事例:株式会社クレディセゾン

株式会社クレディセゾンではソフトウェアの利活用などのDXは事業競争力を決定づける極めて重要なものであると位置づけておりDXのためのリスキルに取り組んでいます。

クレディセゾンでは以下のようにリスキルのレベルをレイヤーごとにわけています。

“Layer1 :コアデジタル人材(エンジニア、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ、デザイナー)アプリ開発やサーバ構築などの開発経験を有するエンジニアや、トップデータサイエンティストなど、デジタル・データに関する深い知識・経験を保有している人材
Layer2 :ビジネスデジタル人材(ゼネラリスト+コア技術)ビジネス部門の業務知識を活用し、コアデジタル人材と連携しながら、全社横断的にアプリ開発などのデジタル化を推進する人材
Layer3 :デジタルIT人材(ドメインエキスパート、業務システムエキスパート)デジタルやITに関する知識・スキルを保有しており、業務推進に活用する人材”

引用:クレディセゾン CSDX戦略

このようにレイヤーをわけることで、従業員のキャリア観やレベルに合わせたリスキルを実現しています。

事例:株式会社日立製作所

株式会社日立製作所では、デジタル人財の強化のために国内グループ企業の全社員約16万人を対象にリスキルを実施しています。日立製作所では、e-ラーニングシステムの導入やワークショップ、研修など様々な手段でリスキルの場を提供しています。

日立製作所の取り組みの中で最も特徴的なのが「デジタルリテラシーエクササイズ」です。以下のようなステップを踏んでデジタル人材を育てています。

①DXの基礎:DXの基本と必要性を知る
②課題定義:DXを用いてやりたいこと、やるべきことを見つける
③実行計画の立案:着想を実行計画に落とし込む
④実行に向けた動き:実行のためのプロセス遂行スキルを身につける

参考:株式会社日立アカデミー  企業における人財育成について

このように丁寧にステップを踏むことで、DXに不安意識を持っている従業員を取りこぼさずにリスキルを実施できます。

リスキルの導入が不安な場合は外部パートナーも検討

リスキルの導入方法や事例について紹介しましたが「従業員にリスキルを受け入れてもらえるか」「自社にとって有益な教育プログラムを選定できているか」このような不安を抱える方も多いでしょう。

そんなときは、パートナーとなる企業とともにリスキルの導入を検討してみましょう。外部からの視点が入ることで、客観的に自社を捉えることが可能です。

株式会社RECOMOは理念から丁寧に会社づくりをサポートする会社です。サービスの1つである「RECOMO X」では以下のようなサポートを提供しています。

・経営者が取り組む本質的な課題の可視化
・ビジョン実現のための人材組織戦略策定と実行支援体制構築の支援
・責任者人材の育成/内製化支援

必要な人材と現在の人材のギャップの分析や教育プログラムの設計・デザインの支援も可能です。また、「RECOMO X」であればリスキルのみならず、組織開発/人材開発のサポートを二人三脚で行います。

上手くパートナー企業と連携しながら、リスキルの導入を進めましょう。

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