人材版伊藤レポートとは?経営に直結する人材戦略を徹底解説!

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皆さん、人材版伊藤レポートについてご存知でしょうか?

人材版伊藤レポートは、経済産業省が日本企業の収益性改善のために作成しました。「人材版」とあるように企業の組織面での考察/分析が主となっています。

人材版伊藤レポートを実践することで企業の競争力向上を実現できます。

概論だけでなく、具体的な施策も示されているので、すぐに行動に移せます。

しかし、実際の人材版伊藤レポートは130ページ近くあり、すべてのページを読むのは大変です。

本記事では、人材版伊藤レポートの概要と具体的に日本企業が導入すべきとされている5つの施策について要点を解説します。

伊藤レポートとは?

まず、伊藤レポートとは2014年に伊藤邦雄一橋大学教授(当時)を座長とした、経済産業省の報告書の通称です。

経済産業省は、日本企業の収益性が長期的に停滞していることを危惧しています。そこで、どうすれば改善できるか方向性を日本企業に示す目的で伊藤レポートを作成しました。

2014年の伊藤レポート及び、2017年にアップデートされた伊藤レポート2.0では「企業の戦略的投資」による収益性の改善方法が主に示されました。

具体的には、長期的なイノベーションには長期的な投資が必要であるという考えのもと、企業と株主との間で協力関係を構築することが重要だとしています。

一方、今回紹介する「人材版伊藤レポート」は、収益性を上げるための必要な組織体制について特化した報告書です。アプローチは異なるものの、同じように日本企業の収益性を改善するために作成されました。

2020年に第一弾が公表されて、現在2022年5月に第二弾の「人材版伊藤レポート2.0」が公表され多くの経営者に読まれています。

記事の前半では、第一弾で記された経済産業省が提唱する「目指すべき組織体制」の概要についてご紹介します。

記事の後半では「目指すべき組織体制」のために日本企業はどのような施策を打つべきか第二弾で記された内容をご紹介します。

すでに2020年度の人材版伊藤レポートをご覧になっている方はこちらからご確認ください。

人材版伊藤レポート2.0/経営戦略と人材戦略を連動させるには?

人材版伊藤レポートの概要

人材版伊藤レポートで示された結論は「企業は経営戦略人材戦略を連動させるべき」ということです。

具体的には、以下の図表1の左側に記された従来慣行されてきた考え方から、右側の本レポートで示された考え方にシフトする必要があるとしています。

引用:人材版伊藤レポートP6図表1

この図表で示された右側の6つの項目について以下で詳しく説明します。

①「管理」ではなく「投資」

人事における考え方はコストのかかる「管理」ではなく、未来の価値創造に向けた「投資」であるべきだとしています。人件費は最もコストのかかる部分で、いかにして少ない人材で組織を回すかという点は組織の永遠の課題でしょう。

しかし、この点にこだわり過ぎず、人材は成長し価値創造の担い手になることを意識して、積極的に人材へ投資することが企業の成長にもつながるとされています。

②「人事」ではなく「人材戦略」

経営陣は「人事」を軽視せずに、企業の競争優位性を保つための重要な「人材戦略」という視点で組織強化に取り組むべきだとしています。

その背景には、終身雇用や年功序列などの日本独自の雇用形態の慣行が企業の競争優位性を落としているという考え方があります。

時代に合わせた人事制度の導入が必要となり、持続的な企業価値の向上には「人材戦略」が必要不可欠です。

③「人事部」ではなく「経営陣・取締役」

人材戦略は「人事部」単体ではなく「経営陣・取締役」を巻き込んで行う必要があるとされています。

勢いのある企業であるほど、事業部門の権限が強く、バックオフィスである人事が経営戦略に関与できていないケースがあります。

人材戦略と経営戦略を連動させるには、経営陣がイニシアチブを取って人材戦略の舵を取らなくてはいけません

④「内向き」ではなく「積極対話」

社内外のステークホルダーのエンゲージメントが人材戦略には必要不可欠とされています。

そのためには、現在の経営戦略に「なぜ取り組んでいるのか」や「どのような裏付けがあるのか」などを積極的に発信することが必要です。

経営戦略が腑に落ちることで、従業員それぞれが目標のために行動する組織へと成長します。

⑤「相互依存」ではなく「個の自律・活性化」

従業員が企業に依存、企業が従業員に依存しているような組織ではなく、従業員それぞれが個として自律している組織を目指すことが持続可能な組織構築につながります。

企業の成長には継続的なイノベーションが必要です。従業員一人一人が企業を良くするために考えるので経営陣だけでは出てこなかった画期的なアイデアも期待できます。

⑥「囲い込み型」ではなく「選び、選ばれる関係」

従来の日本企業は、終身雇用があたりまえとなっており、いわゆる「囲い込み型」の採用が慣行されてきました。

しかし、2022年現在では「転職人口の増加」「在宅ワークの浸透」「雇用形態の多様化」が進んでおり、必ずしも囲い込み型の企業が選ばれるわけではありません。

優秀な人材を確保するには、企業独自の魅力を発信することが必要です。

このように、人材版伊藤レポートでは時代の変化によって、組織も変化していく必要性があると訴えています。まず、そのためには企業の「人事」に対する考え方を改める必要があり、組織強化のための行動が必要です。

人材版伊藤レポート2.0/経営戦略と人材戦略を連動させるには?

2020年度の人材版伊藤レポートでは「企業は経営戦略と人材戦略を連動させるべき」ということが示されました。人材戦略の重要性はわかっても実際にどのような行動に移せばよいか疑問に思う方も多いでしょう。

経済産業省は2022年5月に経営戦略と人材戦略を連動させるための具体的な施策を人材版伊藤レポート2.0という形でまとめました。

これから紹介する5つの施策を実践し、自社でも経営戦略に基づいた人材戦略を構築するように努める必要があるでしょう。

 ①CHROの設置

人材版伊藤レポート2.0において、はじめに取り組むべきとされているのがCHROの設置です。CHROとは、最高人事責任者のことで、Chief Human Resource Officerの略です。CHROは一般的な人事部長とは異なり、経営陣の一員として経営戦略に関わるポジションになります。

CHROの仕事には「人事戦略の起案と運用」「社内外のステークホルダーとの対話」「経営戦略の参画」などがあります。

経営戦略と人材戦略を連動させるには、イニシアチブを持って進める責任者が必要不可欠です。CHROを設置して人材戦略に取り組める組織体制を整えましょう。

 ②企業文化の再考と浸透

経営戦略及び人材戦略において、企業の理念や企業文化の定義付けが根幹となります。なぜなら、企業の競争力強化のためには、従業員の動機づけが必須だからです。

まずは、自社が社会・環境にどのようなインパクトをもたらしたいかという観点から自社の存在意義を再考してみましょう。

企業の理念や企業文化を可視化、言語化することで、従業員の進む方向が明確となります。また、社外のステークホルダーに説明する際の納得感にもつながります。

これらを浸透させるためには「企業文化の観点を人事評価に取り入れる」や「経営陣と従業員が対話できる環境を作る」などの施策が実践できます。

①CHROの設置と同様に②企業文化の再考と浸透も人材戦略の土台であるため、早めに取り組みましょう。

 ③採用計画の見直し

人材戦略の土台が出来上がったら、採用計画の見直しに取り組みましょう。

自社の経営戦略をもとに必要な人材の質と量を分析します。分析の際には現状と理想の組織とのギャップを明確にする必要があります。

すぐに必要な人材が見つかるとは限らないので、実現可能な視点も意識しながら採用計画を組み立てましょう。

また、人材版伊藤レポート2.0では以下のような採用にも力を入れるべきとしています。

・プロジェクトベースの採用
・学生の採用
・博士人材等の専門人材の採用
・多様な経験を持ったキャリア人材の採用
・外国人の採用

上記のような採用では自社になかった新しい視点を経営に取り入れられます。また、適切な環境を与えることで、自主的に成長していく人材になります。

人材獲得競争は厳しくなる一方ですが、このように視野を広げて採用に取り組むことで、優秀な人材の登用が可能です。

 ④従業員のリスキル

事業の成長スピードが早いほど、必要な採用計画は厳しくなり、現実的なものではなくなります。そこで意識すべきなのが、既存の従業員に対してリスキルの環境を提供することです。

採用計画の見直しで明確にした、理想の組織とのギャップについて既存の従業員が新たな知識を身につけることでカバーできないか検討してみましょう。

例えば、現在特に需要に対して供給が追いついていない分野の人材に「デジタル人材」があります。デジタル人材とは、最先端のデジタル技術を活用して企業に対して新たな価値提供ができる人材のことをいいます。

最先端のデジタル技術を扱う専門家もいますが、現在ではデジタル技術自体も使いやすく改良されています。マニュアルを見たり、研修を受けることで、簡単に使えるようになることも多いです。

このような、研修の企画や資格取得に対する報酬制度などの人材開発」への投資は企業の成長に必要不可欠です。積極的に検討していきましょう。

 ⑤多様な働き方の推進

具体的には、リモートワークの導入や副業・兼業を認めるなどの働き方を推進していきましょう。多様な働き方を実現することで、従業員のエンゲージメントや優秀な人材が集まるための要素にもなります。

特に、副業や兼業は現在の業務が疎かになるのではないかと懸念する企業も多いでしょう。しかし、実際には他分野の知識が現在の業務に生かされたり、従業員のモチベーション向上につながるケースが多々あります。

リモートワークの導入や副業・兼業を認める際には、業務上の秘密が漏洩することや、競業により自社の利益が害されることのないように規定を設けるようにしましょう。

このような人材版伊藤レポート2.0で示された施策は、多くの企業ですでに導入されています。

企業の導入事例を経済産業省が実践実例集という形でまとめています。企業ごとに抱えている課題も異なるので、参考にしてみると良いでしょう。

効率的に人材戦略に取り組むには?

人材版伊藤レポート2.0では、具体的に企業がどのような施策を取るべきか示されました。しかし、現状の組織体制を変更するのが不安だったり、現実的な採用計画の作成に時間がかかる場合も多いでしょう。

そんなときは、パートナーとなる企業とともに人材戦略の構築をすることを検討してみましょう。外部からの視点が入ることで、客観的に自社を捉えることが可能です。

株式会社RECOMOは理念から丁寧に会社づくりをサポートする会社です。サービスの1つである「RECOMO X」では以下のようなサポートを提供しています。

・経営者が取り組む本質的な課題の可視化
・ビジョン実現のための人材組織戦略策定と実行支援体制構築の支援
・責任者人材の育成/内製化支援

「RECOMO X」は、一般的な相談に乗るだけのコンサルとは異なり、客観的な視点を持ちながら組織の中に入り込み、二人三脚で組織開発に取り組みます。

組織開発のプロセスは1つずつ丁寧に進めていく必要があり、途中で挫折してしまうことも多いです。上手にパートナー企業と連携しながら、人材戦略に取り組みましょう。

詳しい組織開発の概要やプロセスはこちらの記事をご参照ください。

組織開発とは?必要なプロセスや企業事例を紹介!

まとめ

本記事では、人材版伊藤レポートの概要と具体的に日本企業が導入すべきとされている5つの施策について要点を解説しました。

国としても、日本企業の収益性の停滞を危惧しており、人材版伊藤レポートという形で有益な情報を共有しています。

人材版伊藤レポートで示された通り、経営戦略と人材戦略を連動させることが持続的に成長する企業になるための鍵です。

そのためには、今回ご紹介した5つの施策の実施が必要不可欠です。

自社ですぐに取り組むことが難しい場合には、パートナー企業と共に取り組むのがおすすめです。

「RECOMO X」は丁寧なヒアリングを通じて、組織開発の最初から最後までを伴走者としてサポートするサービスです。

人材戦略を構築する際には「RECOMO X」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。