人的資本経営とは?企業が取り組むべき必要性と準備について解説!

人的資本経営

人的資本経営についてご存知でしょうか?最近では「人材版伊藤レポート2.0」の公表や「人的資本経営コンソーシアム」の実施などさまざまな政府の取り組みにより、人的資本経営を耳にする機会も増えてきました。

しかし、自身で調べても情報量が多く、人的資本経営がなぜ必要で何を自社で取り組むべきなのか曖昧にしか理解できていない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、経営層が理解しておくべき、下記3点を中心に解説していきます。

・人的資本経営に取り組む必要性と取り組まないことのリスクについて
・具体的に企業は何に取り組む必要があるのかについて
・確実に人的資本経営を実践していくための道筋について

人的資本経営とは?

概要

まずは、人的資本経営の概要や背景について理解しておく必要があります。経済産業省では、人的資本経営とは何か以下のように示しています。

“人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。”

引用:経済産業省

ポイントは人材を資本と捉えるということで、人材は投資の対象として企業は人材に対し時間やお金を使っていくべきだという考え方です。長期的な企業の成長のためには必要不可欠な要素の1つです。

資本には有形資本と無形資本の分類があり、人的資本は無形資本に属します。有形資本は形のある株式や現金などの「財務資本」や施設や設備などの「製造資本」のことを指します。一方、無形資本は形がないもので、人的資本の他に著作権やノウハウなどの「知的資本」も無形資本の1つです。

企業の市場価値はこれまで有形資本によって評価されてきました。しかし近年では無形資本が評価されるようになっており、一部の業界では企業の市場価値の8割を無形資本が占めているほどです。

時代の変化によって、今の日本企業に求められている「人材」に対する考え方が人的資本経営です。

人的資源との違い

人的資本に似た言葉に「人的資源」があります。両方とも人材に関する考え方であることは同じですが、大きな違いは人材を「コスト」として捉えるか「投資先」として捉えるかです。

人的資源は従来の日本の経営において慣行されてきた経営の考え方です。いかに効率的に少ない人数で経営を回すかという点に特化してきました。一方、人的資本は長期的な目線で見ると「ヒト」に投資することで個の自律が促され、結果的に長期的な企業の成長につながるとされています。

競争が激化する社会の中で、日本企業の収益性が長期的に停滞していることが問題視されています。今後、日本企業の競争力を強化していくための手段として「人的資源」から「人的資本」へと移行する流れがあります。

背景

人的資本経営は1990年代から存在している言葉ですが、2020年頃から再度注目を浴びはじめています。その背景には以下の2つの変化が関係しています。

投資家心理の変化
前述の通り、企業の市場価値は有形資本が評価されていた時代から無形資本が評価される時代へと変わってきています。その中でも注目されているのが「ESG投資」です。Environment (環境)、Social (社会)、Governance (ガバナンス) の略称で、これら3点は投資家が企業を評価する上で重要視している基準とされています。

投資家心理としては、長期的に利益を出し続ける企業に投資をしたいと考えます。現状の財務資本や製造資本を見ても長期的な成長が見込めるかの判断が難しいことが多いです。人的資本はESG投資の中でも「社会」と「ガバナンス」において重要な項目です。人的資本経営によって健全で個が自律した組織を構築することは、長期的な企業の成長に必要不可欠であり投資家からも評価されています。

このような背景から、資金調達をするため、または既存の投資家との関係構築のために人的資本の開示をする企業が増えています。

働き方の変化
2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、テレワークの浸透や非正規雇用の増加など働き方の多様化が進んでいます。このように働き方が多様化した時代では、従来の終身雇用を代表とする囲い込み型の採用では対応が難しくなっています。

従業員一人一人に寄り添った働き方を提供することが必要となり、従業員側も企業側も共に依存しない関係性が求められています。

人的資本経営に取り組むことで、このような従業員と企業とのあるべき姿を実現できます。「魅力的な人材を確保できない」「従業員が当事者意識を持って行動してくれない」とお悩みの経営者は一度、人的資本経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。

人的資本開示の義務について

2021年6月に「コーポレートガバナンス・コード」が改定されて、人的資本の開示の義務化が明記されました。

コーポレートガバナンス・コードとは、東京証券取引所が定めたコーポレートガバナンス(企業統治)の実現のためのルールです。このルールに従うことによって、企業が透明性を保ち、適切に企業統治に取り組んでいるかどうか、外部からでも明確に分かるようになります。

コーポレートガバナンス・コードには法的拘束力がないため、人的資本の開示にも法的義務はありません。しかし、上場企業においてはコーポレートガバナンス・コードを遵守することが強く推奨されており、実質的には上場企業の義務となっています。上場していない企業であっても企業の市場価値の評価指標として非常に重要な役割を持っています。

また、2023年には有価証券報告書に人的資本情報の記載の義務付けが検討されています。今後は人的資本の開示が法的義務となる可能性があるので注意しましょう。

2021年6月の改定で、具体的に下記2点の人的資本の開示義務が明記されました。

“1. 取締役会の機能発揮
・プライム市場上場企業において、独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には、過半数の選任の検討を慫慂)
・指名委員会・報酬委員会の設置(プライム市場上場企業は、独立社外取締役を委員会の過半数選任)
・経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表
・他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任

2. 企業の中核人材における多様性の確保
・管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定
・多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表”

引用:改訂コーポレートガバナンス・コードの公表

現在、人的資本に取り組んでいない企業も今後は必要となってくる可能性が高いです。次章で説明する方法を実践して事前に開示の準備を進めましょう。

企業がやるべきこと

企業が人的資本に関して、取り組むべきことは大きく分けて「情報開示の準備」と「人的資本経営の実践」の2つです。

それぞれについて具体的な施策を紹介していきます。

情報開示の準備

情報開示について、具体的に何を開示すればよいかわからない方も多いと思います。2022年8月30日に内閣官房の非財務情報可視化研究会は「人的資本可視化指針」を公表しました。

人的資本可視化指針では、下記のような視点から情報開示をするべきとしています。

①人材育成
研修時間や費用などを算出、具体的にどのような研修を行なったか、どのような効果があったかを明記

②流動性
離職率、定着率、採用や離職にかかったコストなどを算出、重要なポジションにおいては後継者育成の計画を明記

③ダイバーシティ
男女間の給料の差や正規社員と非正規社員の福利厚生の差、育児休暇の取得率などを算出、多様性の確保に向けた人材育成や雇用の計画を明記

④健康・安全性
労働災害の発生件数や安全衛生に関する研修を受講した従業員の割合を算出、安全衛生マネジメントシステム等の導入や労働関連の危険性(ハザード)に関する説明の実施

⑤コンプライアンス・労働慣行
団体労働協約の対象となる従業員の割合、業務停止件数や苦情の件数などの算出、児童労働・強制労働に関する説明や結社の自由や団体交渉の権利等に関する説明を実施

このような項目を見える化することで、情報開示に対応可能です。

人的資本経営の実践

人的資本経営については、2020年公表の「人材版伊藤レポート」と2022年5月公表の「人材版伊藤レポート2.0」に実践するための施策がまとめられています。

その中で示された施策は以下の5つです。

 ①CHROの設置
人的資本経営においてまず意識しなくてはいけないのは、経営戦略と人材戦略の連動です。そのためには最高人事責任者であるCHROを経営陣の一員として設置することが推奨されています。CHROとは、Chief Human Resource Officerの略です。CHROがイニシアチブを持って人材戦略を進める必要があります。

 ②企業文化の再考と浸透
企業の理念や企業文化を可視化、言語化することで、従業員の進む方向が明確となります。これらを浸透させるためには「企業文化の観点を人事評価に取り入れる」や「経営陣と従業員が対話できる環境を作る」などの施策が実践できます。

 ③採用計画の見直し
人材獲得競争は厳しくなる一方で、視野を広げて採用に取り組む必要があります。具体的には、プロジェクトベースの採用、学生の採用、外国人の採用などを積極的に行いましょう。

このような採用では自社になかった新しい視点を経営に取り入れられます。また、適切な環境を与えることで、自主的に成長していく人材になります。

 ④従業員のリスキル
人材開発」への投資は企業の成長に必要不可欠です。具体的にはデジタルツールの研修企画や簿記などの資格取得に対する報酬制度を作ることがあげられます。新たに新規採用を増やすだけでなく、既存の従業員が新たな知識を身につけることでカバーできないか検討してみましょう。

 ⑤多様な働き方の推進
具体的には、リモートワークの導入や副業・兼業を認めるなどの働き方を推進していきましょう。多様な働き方を実現することで、従業員のエンゲージメントや優秀な人材が集まるための要素にもなります。

より詳しい人材版伊藤レポートの概要や実践のためのポイントは下記の記事をご参照下さい。

人材版伊藤レポートとは?経営に直結する人材戦略を徹底解説

人的資本経営に関する国内の動向

経済産業省による「非財務情報の開示指針研究会」

非財務情報の開示指針研究会は、非財務情報の具体的な開示方針や開示指標等の対応について研修する会です。2021年9月に経済産業省によって発足しました。

内閣官房「非財務情報可視化研究会」

非財務情報可視化研究会は、非財務情報の開示ルール策定と、企業や経営層に向けた開示の指針について研究する会です。2022年2月に内閣官房によって発足しました。

人的資本経営コンソーシアム

人的資本経営コンソーシアムは、人的資本経営の実践に関する先進事例の共有、企業間協力に向けた議論、効果的な情報開示の検討を行う会です。2022年8月に伊藤レポートを作成した伊藤邦雄氏を中心に発足しました。

人的資本経営実践のためのポイント

人的資本経営の実践のための施策を5つ紹介しましたが、現状の組織体制を変更するのが不安だったり、現実的な採用計画の作成に時間がかかる場合も多いでしょう。

そんなときは、パートナーとなる企業とともに人的資本経営の実践をすることを検討してみましょう。外部からの視点が入ることで、客観的に自社を捉えることが可能です。

株式会社RECOMOは理念から丁寧に会社づくりをサポートする会社です。サービスの1つである「RECOMO X」では以下のようなサポートを提供しています。

・経営者が取り組む本質的な課題の可視化
・ビジョン実現のための人材組織戦略策定と実行支援体制構築の支援
・責任者人材の育成/内製化支援

「RECOMO X」は、一般的な相談に乗るだけのコンサルとは異なり、客観的な視点を持ちながら組織の中に入り込み、二人三脚で組織開発に取り組みます。

組織開発のプロセスは1つずつ丁寧に進めていく必要があり、自社だけでは途中で挫折してしまうことも多いです。上手にパートナー企業と連携しながら、人的資本経営に取り組みましょう。

詳しい組織開発の概要やプロセスはこちらの記事をご参照ください。

組織開発とは?必要なプロセスや企業事例を紹介!

まとめ

本記事では、人的資本経営において企業が取り組むべき準備とその必要性について解説しました。

時代の変化により、企業の市場価値の指標も変わってきています。持続的な経営をするためには高い企業価値を保ち、各ステークホルダーに情報を開示していく必要があります。

人的資本の開示については、法的義務はないものの、徐々に整備が進んできている現状です。早めに準備を進めることで対応できるようにしておきましょう。また、人的資本経営によって、従業員の個の価値を最大限活かすことは今後の企業の命題とも言えるでしょう。

人的資本経営を自社ですぐに取り組むことが難しい場合には、パートナー企業と共に取り組むのがおすすめです。

「RECOMO X」は丁寧なヒアリングを通じて、組織開発の最初から最後までを伴走者としてサポートするサービスです。

人的資本経営を実践する際には「RECOMO X」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。